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2021.08.20

産後の悩み

産後の肥立ちとは? 悪いとどうなる?いつまで続くの?【産婦人科医監修】

「産後の肥立ち(ひだち)」って、どういう意味か、知っていますか? 産後の肥立ちが悪いと、体にどんな影響があるのでしょうか。また、産後の肥立ちをよくするためにはどんな点に注意すべきか、産前産後ケアの第一人者として知られる産婦人科医の松峯寿美先生に聞きました。

産後の肥立ちとは?

産後の肥立ちとは、「妊娠・出産という大仕事を終えてダメージを受けた母体が、妊娠前の元気な状態に回復するまで」の期間を指す言葉。

今ほど医療が発達していなかった戦前の日本では、産後のママの体力が回復できず、ときには子宮内感染や産道の傷から細菌感染するなどして、命を落とすケースもありました。「産後の女性は体を大切にしなくてはいけない」と、産後に里帰りする習慣があったのも、産後の肥立ちをよくするための知恵だったのです。

産後1ヶ月までに起こりやすい症状は?

お産を終えたばかりのママは、長距離マラソンを走り終えてゴールしたのとほぼ同じ状態。まだ万全ではない体調の中で初めての育児がスタートするため、心身ともに疲れやすくなっています。

症状の程度には個人差がありますが、産後の悪露(おろ)や発熱など、この時期の母体に起こりやすい症状について見ていきましょう。

悪露が出る 

悪露(おろ)とは、産後の腟から排泄される出血のこと。胎盤がはがれたあとの出血とともに、子宮内に残った卵膜の一部などが排出されます。

産後1週間は生理のときのような赤色や赤褐色の悪露がみられますが、子宮が回復するにつれて悪露の量が減っていき、色も薄い茶色→黄色→白へと変化します。産後1ヶ月後には透明なおりものに変化するでしょう。

産後1~2週間後、いったんおさまっていた悪露が赤くなり、一時的に量が増えるケースもありますが、すぐにおさまるようであれば、子宮内にたまっていた血液が排出されただけなので心配はいりません。

ただし、赤褐色の悪露が長引くときは、子宮の回復が悪いサイン。早めに受診しましょう。

会陰切開の傷が痛い

出産直後は、会陰切開のあとや、産道の傷が痛みます。座ることがつらかったり、排尿時にしみることがありますが、産後1ヶ月を迎えるころには楽になります。

骨盤がグラグラする

妊娠中は大きな子宮を支え、出産時には3000g前後の赤ちゃんが通過するため、産後のママの骨盤は広がった状態。そのため、グラグラとして不安定です。  

医師の許可が出たら骨盤を徐々に戻していくために、ベッド上で足首を動かすなど、骨盤戻しのエクササイズを少しずつ行いましょう。

貧血になる

ママの母乳は血液からできているため、産後の授乳期は「鉄欠乏性貧血」になりがちです。

妊娠中から鉄欠乏性貧血だった人の場合、出産時の出血量が多いと貧血が悪化して、立ちくらみが起こりやすくなるケースも。

また、鉄分が不足すると、母乳の出が悪くなったり、体力の低下につながります。貧血ぎみと感じたら、産後健診で主治医に相談しましょう。

おっぱいが張る

妊娠後期からプロラクチンというホルモンの働きで乳腺組織の中で乳汁がつくられるようになるため、おっぱいが張りやすくなります。乳頭にある乳管口(乳汁の出口)が開通していないと、乳腺組織の中に乳汁がたまって、おっぱいが張って痛みを伴うこともあります。

おっぱいの張りが強い場合は助産師さんに相談しましょう。

発熱する

出産直後に38度以上の発熱が2日以上続くのは「産褥熱(さんじょくねつ)」といわれる症状。出産時の子宮や産道の傷から細菌感染を起こすのが主な原因です。細菌が腟内を上向して、子宮頸管を突破し、子宮内膜炎を起こすことがあるのです。

産後は母体の免疫力が低下しているため、悪露が出る時期は細菌感染を起こしやすく、尿路感染や膀胱炎を起こすこともあります。おなかの痛みを伴う発熱の場合は尿検査を行って、排尿トラブルか子宮内感染かを診断します。

一方、発熱とともに、おっぱいが張って痛むときは、乳腺炎を起こしている可能性が大。

産後に発熱がみられたときは、子宮内膜炎、膀胱炎などの排尿トラブル、乳腺炎のいずれかが疑われます。

むくみやすい

産後は胎盤が体の外に出たことによって、ホルモンのバランスが大きく変化します。不慣れな育児で疲労しやすいこともあり、産後の母体はむくみやすい状態です。足の下にクッションを置くなど、足を高くして休みましょう。

肩こり、腰痛、腱鞘炎が起こりやすい
赤ちゃんのお世話は前かがみの姿勢で行うことが多いため、おっぱいの重みで肩がこったり、腰に負担がかかりやすくなります。妊娠中から肩こり、腰痛がある人は症状が悪化する心配があるため要注意。

また、赤ちゃんを抱き上げたり、沐浴で赤ちゃんの頭を支えたり、搾乳するのを繰り返すうちに、腱鞘炎を起こして手の指や手首が痛む人も。いずれの場合も症状が長引く場合は、整形外科に相談してください。

マタニティブルーズに陥りやすい

マタニティブルーズとは、出産直後から1週間以内に起こりやすい一過性の気分障害。赤ちゃんが生まれてうれしいはずなのに、なぜか気持ちが落ち込んだり、涙があふれることがあります。これは、産後は母体のホルモンバランスがガラリと変わり、自律神経が乱れるのが原因です。ゆっくりと休めば、数日から2週間ほどで自然と回復するので、治療の必要はありません。   

ただし、周囲のサポートが得られずに〝孤独な育児″に陥ると、マタニティ―ブルーズが長引いて産後うつに移行する心配があります。ブルーな気分が2週間以上続くときは、心療内科に相談を。

産後の肥立ちが悪いと、どんなトラブルが起こりやすい?

産後の肥立ち 悪い産後1ヶ月を過ぎても体調が回復しない場合は、「産後の肥立ちが悪い」と考えられます。妊娠中から産後まもない時期にかけては免疫力が低下し、細菌感染しやすい時期でもあります。産後の肥立ちが悪くなると、どんなトラブルにつながりやすいのか、主な症状や対策法を知っておきましょう。

子宮復古不全

臨月に、胃のすぐ下の高さまで大きくなった子宮が、産後約4~6週間かけて妊娠前と同じ状態に戻るのを「子宮復古」といいます。ところが、子宮収縮が悪いと赤褐色の悪露が長引き、子宮の戻りが悪くなる「子宮復古不全」に陥る心配があります。

◆主な症状
・悪露の量が増える 
・悪露がだらだらと続いて微熱が出る
・悪露とともにイヤなにおいがする 
・下腹部痛がある

◆対策法
子宮の回復を促すには赤ちゃんに母乳を吸わせるのがいちばんの方法。赤ちゃんがママの乳頭に吸いつくと、オキシトシンというホルモンが分泌され、子宮収縮を促してくれるからです。

もしも産後1ヶ月を過ぎても赤褐色の悪露が続く場合は、早めに受診しましょう。発熱、におい、痛みを伴う場合は細菌が腟から子宮内に侵入して子宮内感染を起こしている可能性があります。その場合は子宮収縮剤や抗生剤が処方されます。

膀胱炎

産後は免疫力が低下しているため、感染症に注意が必要。尿道口と腟口は近くにあるため、悪露が出る時期は尿路感染や膀胱炎を起こしやすくなります。

◆主な症状
・頻尿になる 
・排尿時に痛みがある
・微熱が続く 
・尿がにごる

◆対策法
細菌感染が原因なので、膀胱内の細菌を洗い流すためにも水分をたくさんとりましょう。中でも濃いめの日本茶や、ダンデライオンのティー(タンポポコーヒー)など、利尿作用のあるお茶やフルーツがおすすめ。

「排尿痛があるから」とトイレを我慢するのはNGです。痛みが続くときは産婦人科、または内科を受診しましょう。

乳腺炎

おっぱいが張って、乳腺がつまっているとき、赤ちゃんがママの乳首を浅くくわえるなどして、乳頭に傷があるときは、細菌が傷口から入って乳腺の炎症を起こす心配があります。痛みや張りがあるときは乳腺炎が疑われます。

◆主な症状
・おっぱいが張るのに、母乳の出が悪い 
・おっぱいの痛みとともに微熱が続く
・おっぱいが赤く腫れる 
・乳頭が傷ついて痛みがある

◆対策法
乳腺のつまりを予防するには、赤ちゃんに吸ってもらうのがいちばんの方法ですが、痛みや腫れ、発熱を伴う場合は、早めに受診して抗生物質を処方してもらいましょう。症状を悪化させると、患部を切開して、膿を出す処置が必要になるケースもあるからです。

おっぱいの張りが強いときは、搾乳すると楽になりますが、搾乳しすぎるとかえって張りが強くなるため、母乳外来で相談してください。乳腺をつまらせる原因となる高カロリーな食事は避けて、野菜たっぷりのヘルシーな食事を意識しましょう。

疲れがとれず、うつっぽくなる

昼夜を問わず、赤ちゃんのお世話に追われるため、疲労がたまりやすくなっています。疲れがとれない状態が続くと、気力の低下を招きます。マタニティブルーズが長引いたり、産後うつの引き金になることもあるため、注意が必要です。

◆主な症状
・体がだるく、疲れがとれない 
・倦怠感を感じてゴロゴロしたい
・気持ちが落ち込む

◆対処法
育児に疲れたときは気分転換も必要です。1ヶ月健診後に外出できるようになったら、子連れで通えるベビーマッサージや、産後ヨガの教室に通うのもいいでしょう。

ただし、疲労感が強いときには、日常生活に支障をきたす前に、行政が実施している産後ケアサービスを利用しましょう。母体を休め、体力を回復させるためにも、地域の産前産後ケアセンターに相談してください。

「産後の肥立ち」といわれる期間はいつまで?

「産後の肥立ち」は産後100日間が目安

昔は「お産によって100本の筋が切れる。いったん切れてしまった筋は1日1本ずつつながっていくため、体が元に戻るまでは100日かかる」と言い伝えられていました。

通常、子宮そのものは産後1ヶ月で回復しますが、「母体のひとつひとつの組織が妊娠前の状態に戻るには100日かかる」という意識を持ちましょう。

「産後の肥立ち」と「産褥期(さんじょくき)」は、どう違うの?

「産後の肥立ち」は、ママの体と心が妊娠・出産のダメージからゆっくり回復する期間として、ほぼ産後100日をさします。一方、「産褥期」とは産後の悪露がおさまって、子宮が元に戻るまでの産後4~6週間の期間をさします。

産後健診のときに悪露の出血がおさまっていれば「子宮復古が順調」「妊娠前の生活に戻っても問題ない」と医師から許可がおりて性生活も解禁になります。とはいえ、完全に妊娠前の体に戻ったとはいえない時期です。

産後4~6週間たつと、子宮そのものは回復していますが、骨盤はまだ広がっていますし、骨盤底で大きな子宮を支えていた骨盤底筋もゆるゆるに緩んだままの状態です。産後3ヶ月までは母体のリハビリ期間と考えて、少しずつ活動量を増やしていくようにしましょう。

産後の肥立ちをよくするには?

「産後の肥立ちがよい」というのは、悪露がおさまって子宮が回復し、微熱、貧血、立ちくらみなどの不調がないということ。“どの程度動いても大丈夫か”には個人差もありますが、「自分は元気」と動きすぎてはいけません。

動きすぎて疲れがたまると、心の余裕がなくなり、育児を楽しむ気持ちを持てなくなってしまうからです。「産後の肥立ちをよくするには、体を休めることが必要」と、パパや家族にも理解してもらいましょう。

産後1ヶ月間は自宅で育児中心の生活を

産後の体力を回復させるには“適度に体を動かす”ことが大事ですが、毎日の育児がすでに運動になっています。家の中で育児をしながら家事をする程度であれば、重労働にはならないでしょう。

たとえば、買い物は家族にお願いしたり、ネットスーパーを利用するのがおすすめ。産後ヶ月間は赤ちゃんのお世話を中心に過ごし、「外出は禁止だけど、自宅で軽い家事をしてもOK」という切迫流早産の自宅安静と同レベルの生活が望ましいと考えられます。

産後1ヶ月を過ぎたら、外出してもOK

産後健診を終えたら、近所を散歩したり、スーパーに買い物に出かけても問題ありません。ただし、長時間立ちっぱなしで家事をしたり、重い荷物を持ったり、自転車に乗ったりと、妊娠前と同様にフル稼働するのは早すぎます。

産後3ヶ月まではリハビリ期間と考えて、少しずつ活動量を増やしていきましょう。疲れたときには赤ちゃんと一緒に横になって休むように心がけてください。

妊娠中から産後100日にかけては母体の免疫力が低下しているので、感染症を予防するためにも、人ごみに出かけるのはできるだけ避けましょう。

体力を使い果たさず、余力を残しておくことが大事

産後2~3ヶ月目には少しずつ育児に慣れてきますが、疲れが出てくるころでもあります。「自分1人で大丈夫」と、人に頼るのが苦手な頑張り屋さんもいますが、ワンオペ育児を頑張りすぎると、緊張の糸がプツッと切れたときに“産後うつ”を招く心配が。

育児はこの先ずっとエンドレスで続いていくので、力尽きててしまわないことが肝心。困ったときには周囲の人の手を借りて、体と心を休めることが大事です。自分では「できる」と思っていても、人の手を借りて、余力を残しておくことが心と体の回復につながります。

サポーターを確保して、甘え上手になる

出産祝いに来てくれる親しい友人たちには、お惣菜の差し入れをお願いしたり、沐浴を手伝ってもらうなど、サポーターとして来てもらうといいでしょう。

実母や義母がフルタイムで働いていたり、または介護で忙しい、高齢のため手伝ってもらえないなど、さまざまな事情で親族の協力が得られない場合は、行政が支援している産後ケアサービスやファミリーサポートサービスを利用しましょう。民間の家事サポートや産褥シッターなどのサービスについても、前もって調べておくと安心です。

もしもママが体調をくずしたときには、一時保育を利用する方法もあります。

産後の肥立ちが悪いと、更年期に影響するの?

「産後の肥立ちが悪かった」からと、将来的に更年期症状がひどくなる心配はありません。ただし、産後に動きすぎて、骨盤底筋が緩んだままの状態で過ごしていると、産後に“尿もれ”が続いたり、更年期以降に“子宮下垂”や“子宮脱”などのトラブルを引き起こす心配があります。

また、産後うつになりやすい人は生真面目な人が多く、更年期うつになりやすいと考えられています。「更年期なんて、まだまだ先のこと」と考えてしまいがちですが、10年後、20年後の将来的なトラブルを予防するためにも、産後100日は心身の健康を大切にしながら過ごしましょう。

取材・文/ベビモ編集部 校正/主婦の友社校正室

【監修】 松峯 寿美 東峯婦人クリニック名誉院長

東京女子医科大学卒業後、同大学病院に10年間勤務し、「不妊外来」を創設。1980年に東峯婦人クリニックを開業し、女性専門外来の先駆けとなる。2014年より産前産後ケアセンター「東峯サライ」をクリニックに併設。妊娠・出産・産前産後ケア、更年期以降まで、女性の一生をトータルで支える医療を実践。著書に『やさしく知る産前・産後ケア 産婦人科医が教える、ママと赤ちゃん こころとからだ』(高橋書店)など。

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