妊娠中は「太りたくないからダイエット」はNG! 赤ちゃんがちゃんと育つように、そして、産後も元気なママでいるために、食生活を改善していくことが大切です。そこで、栄養のプロである細川モモさんと宇野薫さんが「妊婦のための栄養講座」を開催。これを機会に、自分の食生活を見直してみましょう。
【食にお悩みを抱える2人の相談者】Yさん:2人目妊娠中。「お酒が飲めず、ごはんに走って食べ過ぎてます。上の子のときは16㎏太ったので、気をつけないと・・・」
Mさん:妊娠26週目。「体重が1㎏しかふえていません。大丈夫?」
今はスリムボディより赤ちゃんの健康を優先。体重を増やして目指せ3kgベビー
細川 今ドキの妊婦さんは、「産後に太りたくない」という思いが強いので、できるだけ体重をふやさないようにする人が多いですよね。
宇野 このグラフを見てください。
年々、妊婦さんの食べる量が減っていて、それに比例して赤ちゃんの出生体重も低下していることがわかります。
Yさん そうなんですね! 私は1人目のとき、産む直前に16㎏まで太って、先生に「太りすぎ」と言われてしまいました。赤ちゃんは3,200gもありました(笑)。
細川 体重増加の目安は、妊娠前のBMI値によるんですよね。体重増加が10㎏を超えるとNGという病院もありますが、YさんはもともとのBMIが19.2で「標準」ですから、11~13㎏はふえてかまいません。16kgふえるまで先生が何も言わなかったということは、逆によい病院とも言えますよ。3,000g以上で産んであげることは、赤ちゃんにとっては健康上のメリットが大きく、幸せなことなんです。 ※下の計算式に当てはめて、自分のBMIを算出してみて!
宇野 「妊娠中は赤ちゃんの体重の分だけふえればいい」と思っている人もいますが、胎盤と羊水、妊娠してふえる血液や脂肪も含めて、体重をふやさないとダメ。3,000gの赤ちゃんを出産したママの平均体重増加は11㎏です。意外と多いでしょう?
Mさん 自分が体重をふやさないと、赤ちゃんも大きくならないんですね。がんばらないと……。
宇野 日本では出生体重が2,500g未満の低出生体重児や、1,500g未満の極低出生体重児が年々ふえていて、それと同時に、先天性異常もふえていることが問題になっています。赤ちゃんが小さく生まれてしまうことは、ママがちゃんと食べて、適切な体重増加をしていれば予防できるんです。
細川 必要な摂取カロリーをとることは、妊娠中の食事でいちばん大切なこと。赤ちゃんが発育するための第一条件! 妊娠前の食事に比べて、妊娠初期で+50 kcal(卵1/2個)、妊娠中期で+250 kcal(おにぎり1個)、妊娠後期で+450 kcal(軽く1食分)をふやさなければなりません。でも、各都道府県の妊婦の栄養調査表を見ると、摂取カロリーが充足している県って1つもないんですね。産婦人科の先生からは、妊婦さんが自主的にマタニティダイエットや産後ダイエットをして、なかなか太ってくれないという悩みが出ています。
Yさん 私は食欲はすごくあるんですが、アイスやチョコ、カップめんやフライドチキンなどが無性に食べたくてやめられません。
細川 カロリーは充足していても、たとえばお菓子だけで1500 kcalでは、赤ちゃんは発育しません。「妊娠中にかなり太ったわりには、赤ちゃんは小さかったね」ということもあります。
宇野 チョコやケーキ、アイス、スナック菓子などを妊娠中にやめられない人は多いのですが、これらは“エンプティカロリー”といって、カロリーは高くても栄養はほとんどありません。何を食べてカロリーをとっているか、がポイント。「食べることは、育むこと」。食事の内容が、赤ちゃんの発育にそのまま影響してくるんです。
BMIって何?自分のBMIを算出してみよう
BMI=ボディ・マス・インデックス(Body Mass Index)の略。下の計算式から算出される体格指数のこと。WHO(世界保健機関)で発表された、肥満度をはかるための国際的な指標です。
妊娠前の体重□㎏÷(身長□m×身長□m)=BMI・18.5未満…「やせ」
・18.5~25未満…「標準」
・25以上…「肥満」
予防医療プロジェクト「ラブテリ東京& NewYork」主宰。2014年に三菱地所とともに「まるのうち保健室」を立ち上げ、働く女性の健康を支援。妊婦さん向けの栄養アドバイス本『Luvtelli Baby Book2』、監修『妊娠中の食事』(主婦の友社)が好評発売中。
予防医療に携わる。女子栄養大学大学院にて母子健康の研究を行うかたわら、「ラブテリ」での妊婦栄養研究や、最新データによる栄養カウンセリング・教育活動を行う。現在は厚生労働省の栄養技官を務める。