この記事は、日本脳炎ワクチンの副作用についてまとめたものです。日本脳炎は、定期接種のひとつ。感染して症状が出ると、死亡したり後遺症が残ったりする可能性のある病気です。日本脳炎ワクチンについて、小児科医にお話を伺いました。
日本脳炎はどんな病気?
温暖&湿度が高い地域で発生する
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを持つブタの血液を蚊が吸い、その蚊に刺されることで感染します。病名に「日本」がついていますが日本固有の病気ではなく、東アジア~東南アジア地域、オーストラリアなどで発生しています。
温暖湿潤な地域に多く、国内では、東日本よりも西日本の感染リスクが高くなっています。特に中国地方、九州・四国地方にはウイルスを持つブタが多くいます。
発症すると死亡率は20~40%にも
実は、日本脳炎ウイルスに感染しても、多くの場合は症状が出ません。症状が出る(脳炎が起きる)のは、感染者の0.1~1%です。ただし、症状が出ると重症化することが少なくありません。
主な症状は急な発熱、頭痛、吐き気。けいれんや昏睡状態に陥ることもあります。死亡率は20~40%にものぼり、脳炎による後遺症が残るケースもあります。
発症するのは高齢者が多いのですが、子供の発症例もあります。2006年~2015年の10年間では子供の発症が8名あり、最も小さい子は生後10ヶ月でした。
日本脳炎の予防接種
日本では1960年代まで、日本脳炎を発症する人が子供を中心に大変多くいました。『国民衛生の動向』(厚生労働統計協会)によれば、1950年ごろの日本脳炎による年間死亡者数は2000人前後となっています。
それが現在、日本脳炎による年間の死亡者数は0~2人程度に減っています。この変化は、衛生状態や栄養状態などの環境がよくなったことももちろんありますが、予防接種による効果も大きいのです。
定期接種の不活化ワクチン
日本では、予防接種ワクチンは定期接種と任意接種に分かれています。日本脳炎は定期接種ワクチンです。
定期接種とは、国が接種をすすめ、万一の事故の際には予防接種法による救済措置がとられるもの。決められた期間内なら、無料で受けられます。
また、日本脳炎ワクチンは病原体の毒性をなくし、免疫をつけるのに必要な成分だけを取り出した、不活化ワクチンと呼ばれるものです。十分な免疫をつけるには、何回か受ける必要があります。
標準的には3歳、4歳、9歳で合計4回受ける
日本脳炎ワクチンの接種は1期と2期に分かれています。
1期は3回接種で、無料で受けられる定期接種の時期は生後6ヶ月~7歳6ヶ月未満。
2期は1回接種で、無料で受けられる定期接種の時期は9歳~13歳未満です。
感染源になる養豚場が多いなど高リスクのケースでは、0歳代での接種を検討することもありますが、多くの場合は
・3歳で6日以上の間隔をあけて2回・4歳で1回・9歳で1回が標準的な接種スケジュールです。
決められた回数を受けることが大切
ワクチンは、決められた間隔で決められた回数を打つことで、予防効果が発揮されるようになっています。
病気を予防するためには、体の中に十分な抗体を作る必要があります。
日本脳炎ワクチンの場合は、最初の2回を打つと、体の中に日本脳炎に対する抗体ができます。しかし、その抗体は日本脳炎からしっかり体を守れるほど十分な量ではありませんし、少しずつ減っていきます。
3回、4回とワクチンを打つことで抗体は一気に増え、長期間にわたって日本脳炎から体を守れる量が維持されるように設計されています。
ですから、「1期を受けたから2期はパス」などということをすると、せっかく打った1期のワクチンが無意味になってしまうのです。
決められた回数を打たないと確実な予防効果が期待できないのは、日本脳炎以外のすべてのワクチンも同様です。
日本脳炎ワクチンの副反応と確率
副作用?副反応?
「副作用」という言葉が使われるのは、主に薬に対して。「アレルギー薬を飲んだら副作用で眠くなった」などのように、目的以外の好ましくない症状が出ることを指します。
ワクチンを打ったところが腫れた、受けた後に熱が出たなど、予防接種後に起きる何らかの反応は「副反応」と呼びます。この記事でも以下、「日本脳炎ワクチンの副反応」のように表記します。
深刻な副反応はまず起こらない
日本脳炎の副反応で、深刻なものはほとんど報告されていません。
・腫れ、かゆみ接種した部位が赤く腫れる、かゆくなる、などの副反応が10%程度と比較的よく見られます。4回目の接種でやや多くなります。
・発熱副反応で発熱するのは3%未満です。1回目の接種から3日以内に多く、2回目以降には少なくなります。
・頭痛、腹痛、嘔吐副反応としてこれらの症状が見られるのは0.1~5%程度と、ごくまれです。
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数日後に発熱するのは副反応?
日本脳炎の副反応が見られるのは、接種後3日ぐらいまでなので、数日後の発熱が副反応でないとは言い切れません。ただ、風邪など別の病気の可能性の方が高いかもしれませんね。
日本脳炎ワクチンは、接種後に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が起きた可能性があるとして、2005年5月からしばらくの間、国が積極的な接種を見合わせた時期があります。
ADEMとは、頭痛、発熱、けいれん、嘔吐などを伴う急性の脊髄炎で、なんらかのアレルギー症状と考えられています。
しかしその後、ワクチン接種とADEMの発症には因果関係が認められないこと、より副反応の起こりにくいワクチンが開発されたことなどを受け、再び接種が勧められるようになりました。
この間、接種しなかった人は特例として、無料で予防接種が受けられます(平成7年4月2日生まれ~平成19年4月1日生まれの人が20歳未満の間)。
日本脳炎の副反応・先輩ママの体験談
発熱しました
3歳2ヶ月で最初の接種。接種の翌日に38度の熱が出ました。機嫌は悪くなく、せきや鼻水などの症状もなく、かかりつけ医には「副反応ではないか」と言われました。熱がどんどん上がるようなら連絡してくださいと言われましたが1日で下がり、本人はケロッとしていました。2回目の接種の後は、特に副反応はありません。(Yさん)
接種したところが腫れました
これまで3回受けていますが、毎回接種したところが赤くなり、少し熱を持ったような感じに腫れます。特に心配はいらないとのことで、お風呂でゴシゴシこすらないことだけ注意しています。赤みは翌日には引いています。(Mママさん)