お産そのものへの不安はもちろんのこと、お産の始まりに気づかなかったらどうしよう、という不安も妊婦さんは抱えているようです。お産の始まりは「陣痛」か「破水」かのどちらか。これからやってくる「そのとき」をあわてずに迎えられるよう、陣痛が起きたとき、破水が起きたときにどうすればいいのかを山王バースセンター院長の北川道弘先生に教えてもらいました。
「お産の始まり」先輩ママ200人アンケート
Q.お産の始まりは陣痛から?破水から?
誘発分娩や計画無痛分娩などの「その他」や予定帝王切開を除くと、80%が陣痛か破水から始まっていました。
Q.始まった時間帯は?
深夜か夜に始まった人が約60%を占めています。暗くなってからお産が始まるケースが多い!?「陣痛&破水から産院に行くまでにかかった時間」を聞いたところ、平均【1時間44分】という結果になりました。
Q.産院へは誰と向かいましたか?
夜~深夜にお産が始まるケースが多いためか、夫が約4割という結果に。一度産院に行ったけれど自宅に戻された人は約3割いました。
赤ちゃんはすぐには生まれません。落ち着いて産院に連絡を
お産の始まりは、規則的なおなかの張りや痛みなどがある「陣痛」か、卵膜が破れて羊水がもれ出てくる「破水」のどちらかです。
陣痛から始まる場合、初産婦さんなら10分間隔、経産婦さんなら15分間隔になったら産院に連絡します。痛みの持続時間も数十秒で、強さもそれほどではありませんが、徐々に強くなる痛みに自分でこれが陣痛だと気づくことができるはず。出産までには、初産婦さんで15~16時間、経産婦さんで7~8時間かかります。
陣痛が始まる前に羊水が出てきてしまうことを「前期破水」といい、これは破水から始まるお産です。破水したあと陣痛が起こって、陣痛から始まるお産と同じように進んでいきます。破水の量によっては、尿もれと区別がつきにくいこともあるので、産院に連絡して指示に従いましょう。
どちらの場合も、いきなり赤ちゃんが生まれそうになることはほとんどないので、あわてずに。
実は体からサインが!お産の始まりがくる前の「兆候」
臨月に入ると、赤ちゃんやママの体はお産への準備を始めます。それが下記のようないろいろなサインとなってあらわれるのです。
【トイレが近くなる】赤ちゃんが下がってくることで胃や心臓への圧迫は減りますが、膀胱や直腸への圧迫が強くなり、頻尿や便秘に。
【おりものが少し増える】お産が近づくと、子宮頸管がやわらかくなり、赤ちゃんが通りやすいようにおりものも増えてきます。
【胎動が少し減る】赤ちゃんが骨盤内に入って固定されるため、次第に動きが少なくなります。ただし、まったく感じないことはありません。
【赤ちゃんが下がってくる】臨月に入ると、生まれる準備で赤ちゃんが骨盤内に入ってくるので、母体の胃や心臓への圧迫が少なくなります。
【おしるしがある】おしるしは、子宮口が開いていくときに、赤ちゃんを包んでいる卵膜と子宮の内側がずれて出血したものです。茶色や黒っぽい色のほか鮮血の場合もあり、量はほんの少しのこともあれば、月経のように多い場合もあります。おしるしはお産が近いサインではありますが、おしるしがあったからといってすぐにお産が始まるわけではありません。
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【おしるし体験談】色や量、おしるしから出産までの流れを知っておこう!【産婦人科医監修】【前駆陣痛がある】おなかの張りや痛みの間隔が5分、10分、20分といったように計るたびに違っているなど、不規則な場合を「前駆陣痛」といいます。痛みが強くならなかったり、そのまま消えてしまうことも。体がお産への準備をしている状態で、まだ本格敵な「陣痛」とは呼べず、お産がすぐに始まるわけではありません。
「陣痛」から始まったらどうする?
間隔が規則的かどうか、まずは計ってみて
陣痛の感じ方は人それぞれで、おなかの張りや痛みだけでなく、腰やおしり付近に違和感を覚えたり、足のつけ根を押されるような感じがすることもあります。
始めのうちはあまり強い痛みではなく、痛みを感じる時間も短く、間隔があいています。けれども、次第に強くなって、痛みを感じる時間が長くなり、間隔も短くなっていきます。
「もしかして陣痛かも?」と思ったら、張りや痛みなどの間隔を計ってみましょう。最初は不規則でも時間とともに規則的になってきたり、間隔が短くなってきた、痛みが強くなってきた場合は、陣痛と考えられます。
間隔が不規則だったり、痛みが強くならない、消えてしまうなどの場合は、お産が近づいているサインではありますが、「お産の始まり」ではありません。
先輩ママに聞いた「陣痛どんな感じだった?」
●始まりは下痢をがまんしているような苦痛。ピーク時は「え?おしもが全部裂けましたよね?」って思いました…。(弥生さん・32歳)
●おなかをトラックで踏みつけられる感じ。(mamiさん・30歳)
●始まりは重い生理痛。ピークは食べ物にあたったときのような立っていられない痛みでした。(絵理さん・31歳)
●おなかを中心にギューッとつかまれているような息苦しい感じ。(千尋さん・26歳)
「陣痛からお産入院までの流れ」を確認
①陣痛の間隔を計るおなかの張りや痛み、腰の違和感などが何度もくると思ったら、間隔を計ってみましょう。陣痛アプリなどを利用するのも便利。最初は長かった間隔が次第に短くなってくるようなら、お産の始まりの可能性大です。
②10分間隔になったら産院に連絡するいよいよ「お産の始まり」と呼べる本格的な陣痛になりました。産院に連絡して、カルテ番号や出産予定日、初産か経産か、妊娠中に特別なことがなかったか、ほかに出血などの兆候はないかなどを伝えましょう。
③入院までに自宅で準備しておく出産したらすぐには入浴できないため、陣痛の間隔が長く痛みが弱いうちにおふろに入るか、シャワーを浴びておきましょう。お産には体力も必要なので、消化のよい軽めの食事をとり、トイレもすませておいて。
④いざ、お産入院!産院から「入院してください」と指示されたら、用意しておいた入院用バッグを持って向かいます。車で入院予定の人も、家族に運転を頼めない状況になる、車の調子が急に悪くなるなど、もしもの場合に備えて、陣痛タクシーサービスなど移動方法はいくつか考えておくと安心。
ドクターがお答え!陣痛Q&A
Q.おなかの張りと陣痛の区別、自分でわかる?おなかの張りは、かたくなった状態がしばらく続き、安静にしているとおさまってくるのがふつうです。陣痛の場合は張りが次第に痛みとして感じられるようになり、安静にしていても痛くなったり、おさまったりを繰り返すので、ほとんどの妊婦さんにわかります。
Q.痛いのに自分で病院に行けるか心配…産院に行くときには、陣痛の間隔が10分あり、陣痛の持続時間も30秒ほどのため、おさまっている間に動けるので大丈夫。ただし、経産婦さんで進み方が早くて産院まで間に合わなさそうだったり、強い痛みがずっと続いている場合は、救急車を呼びましょう。
Q.陣痛の強さやその感じ方に体質ってある?たとえば「生理痛が重い」とか「腰痛がひどい」などは、陣痛の強さとは関係ありません。「実母が出産時に陣痛が強かったから心配」という人もいますが、それも無関係です。ただ、子宮内膜症などで癒着が起こっているような場合は、痛みが強くなることはあります。
Q.陣痛がきやすい時間帯ってある?昔から「満月や潮の満ち引き、低気圧などのときに陣痛が起こりやすい」といわれてきましたが、医学的にはハッキリした根拠はありません。実際に分娩時刻の調査をしても、特定の時間帯に集中することはなかったので、実は陣痛がきやすい日にちや時間帯はないのです。