赤ちゃんが無事に産声を上げたらお産は完了!と思うかもしれませんが、実は体が激変する時間はまだ続きます。出産後すぐにどんな処置をするのか、入院室に戻るまでママと赤ちゃんはどんなふうに過ごすのかを、産婦人科医の安達知子先生にうかがいました。
分娩台で2時間は休み、見守ります
赤ちゃんが生まれて、大きな産声も聞こえたらひと安心。その後しばらくして、再び軽い陣痛が起こって胎盤が出たら、お産は終了です。
でも、出産から2時間ほどは、まだまだ母体が急変する可能性が高い時期。すぐに病室に移らず、そのまま背もたれを倒した分娩台(LDRの場合はベッド状に変形)に横たわって過ごすのは、単に体を休めることだけが目的ではありません。急な大出血、血圧の急上昇・急降下など、何かが起きた時にすぐ対処するためでもあります。
一方、臍帯を切ってもらった赤ちゃんは、血や体液などをぬぐわれ、肺に残っている羊水を吸い出されます。その後、インファントウォーマー(保温のためのベッド)の上で、呼吸の状態や皮膚の色、心拍に雑音がないかなどの確認が行われます。
こうして、赤ちゃんも元気であることがわかったら、寝ているママが胸元に抱くカンガルーケアをしたり、初めての授乳を試みたりと、母子の絆づくりがあらためて分娩台の上で行われます。
ママがお産直後に受けるケアと検査
胎盤が出たら、会陰切開した場合は縫合し、大きな変化がないかどうかを分娩台の上で経過観察されます。母子ともに元気なら、初めての抱っこ、初の授乳など、感動の「初」のシーンも分娩台で。
●体をチェック出血の具合、会陰の傷の様子、子宮の収縮具合などを調べます。子宮がなかなか収縮しない時は、おなかの上にアイスノンをのせて収縮を促すことがあります(アイスノンケア)。子宮が収縮することは、止血のために非常に大事だからです。ただし、低体温にならないよう、実施しない施設も。
●初乳を与える赤ちゃんの口をママの乳首の近くに寄せてあげるだけで「吸てつ反射」によって赤ちゃんは本能で乳首を吸います。
●体をふいて着替えをするお産で汗だくになり、血や体液がついた分娩着を寝たまま脱がせてもらい、体をタオルでふいてからパジャマや入院着に着替えます。
赤ちゃんが出生直後に受けるケアと検査
ママのあたたかい胎内から、体温調節も未発達なまま、15度近く気温の低い外界に出たばかり。とにかく体を冷やさないことがとても大事。呼吸状態、心拍数のチェックなどは手早く、あたたかいインファントウォーマーの上でされていきます。
●へその緒を切る赤ちゃんの体が完全に外に出て、臍帯の拍動がおさまったら、臍帯をクリップ留めして止血し、はさみで切ります。
●羊水を吸い出す肺の中に満たされていた羊水は、初めての呼吸とともに吐き出されますが、残っている羊水を口からカテーテルで吸引します。
●体をふく体についたママの血液や体液をタオルでぬぐいます。体脂が多い場合にはぬぐわれますが、皮膚を守るために必要なので残すことも。
●身長・体重測定あかちゃんの身長や体重をはかっておき、あとでどれくらい成長しているかの目安にします。出生体重の平均は3.02kg(平成21年)。
●体をチェック皮膚の色、心拍数、刺激による反射、筋緊張、呼吸数などをチェック。それぞれに点数をつけて、新生児の元気度を客観的に計ります(アプガースコア)。この5つの判断基準で何か問題があれば、すぐに治療やケアが始まります。
病室へ移ったらママとしての新しい生活へ
出産が終わって2時間は、分娩室で安静に過ごします。子宮収縮が不十分だと異常出血を起こすこともあるので、子宮収縮剤が使われることも。その間に異常が起きなければ、ストレッチャーか車いすに乗って、または自力で歩いて病室に戻ります。
部屋に帰ってからも、疲れをとるためにゆっくり休むことが必要。人によっては興奮して眠れなかったり、後産の痛みが強くてつらい場合もあります。そんな時は遠慮なく病院スタッフに相談を。
お産から6~8時間経ったら、血圧、脈拍、体温をもう一度チェック。その後は体力の回復をはかりながら、授乳など育児も少しずつ始まり、ママとしての生活がスタートしていきます。
先輩ママの「お産と産後」体験談
3日目にはラクになった傷の痛み。「案ずるより産むがやすし」です
会陰切開はできればしたくないと思っていました。だからお産の時に先生から「出てきにくそうなので、切りますね」と言われた時にはショックでしたが、麻酔をしたのでその瞬間の痛みはなし。翌日まで円座を使い、3日目からは痛みもほぼ引いて、出産前はあんなに恐怖だったのが嘘みたいでした!(N・Iさん)
ひどい貧血になり、体を支えてもらわないと立てず…
陣痛に気づかないほど夫と夢中でおしゃべりしていて、気づいた時には即入院!のタイミング。入院してから4時間のスピード安産でした。産後は貧血で動けなくて、布団から起き上がる時にも母に体を支えてもらったほど。おっぱい以外はすべて母にお願いして、助けてもらってました。(H・Tさん)
「悪露ってこんなもの」と思っているうちに倒れて救急車に!
産後は母に来てもらい、家事など手伝ってもらっていましたが、頑張らなくちゃと気が張っていたようです。悪露が多い気がしていましたが、赤ちゃん優先で受診もしないでいたら、ある日トイレで気を失い、救急車で搬送されてしまいました。産後は無理は禁物。自分の体も大事にしなくちゃと痛感しました。(M・Aさん)
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