お産が始まると、お腹の赤ちゃんは狭くて複雑な「産道」を通るために、たくさんの工夫をして生まれてきます。どのようにして生まれてくるのか、赤ちゃんが出てくるメカニズムを、総合母子保健センター 愛育病院副院長の安達知子先生に教えていただきました。
赤ちゃんは回旋しながら生まれてきます
お産には産道(骨盤の大きさや形)、陣痛の強さ、赤ちゃん(大きさや回旋の仕方)の3つのバランスが必要です。骨盤の中まで下がってきた赤ちゃんは、ただ子宮収縮で押し出されてくるのではなく、頭をねじ込むようにして産道を突き進みます。
産道は、骨盤の骨の間が複雑に入り組んだ形。まっすぐな円筒状ではありません。その通り道の形に少しでも合わせるように、体を何回かひねって突き進むのです。
赤ちゃんの回旋の様子
1 あごを引いて胸につけ、体を丸めるようにして骨盤の中に入っていきます(第1回旋)。
2 骨盤の入り口は、横長。最初は、母体に対して頭の向きが横向きになるように入っていきます。
3 骨盤の中に入ると、今度は縦長の形に合わせるために、顔を母体の背中側に向けます(第2回旋)。
4 頭が産道を抜けると、産道のカーブに合わせるためにあごを胸から離し、いよいよ外に出る態勢に。
5 頭が産道から出ると、ぐいっと首をそらすようにして出てきます(第3回旋)。
6 さらに90度回転。再び頭を横向きにして、肩を片方ずつ出します(第4回旋)。このあと、もう一度軽い陣痛があり、胎盤が出ます。
赤ちゃんの頭の骨は重なり合って出てくる!
さらに赤ちゃんは産道を通ってくる際、体のなかで一番大きい頭をできる限り小さくする工夫をしています。
頭蓋骨は、丸みを帯びた皿のような骨が数枚、合わさったもの。赤ちゃんの頭蓋骨はやわらかく、少しすき間があります。このすき間をなくし、さらに少し重ねるようにして大きさをコンパクトにしているのです。
ちなみに、誕生後は再び頭蓋骨の結合がゆるみ、すき間ができます。その一部が大泉門です。
赤ちゃんがうまく回旋しないのはどんな時?
何らかの理由でうまく回旋ができないと、お産は進まなくなります。その原因は、実に様々。
赤ちゃんの頭の形と母体の骨盤腔の形の相性が合わなくて、赤ちゃんの顔がママのおしり側を向けず、お腹のほうを向いてしまう場合や、臍帯が短かったり、体に巻き付いている場合、回旋異常となります。
また、赤ちゃんが大きすぎるのも難産の原因の一つ。赤ちゃんに皮下脂肪が大量について、肩回りが頭より大きくなるなど、頭は通っても肩が通れないことがあるからです。
産道になる骨盤腔の形と赤ちゃんの体の相性がよければ、大きくてもすんなり生まれることもありますが、初めての出産で、赤ちゃんが4㎏以上と予想される場合は、予定帝王切開を勧められることも。
このほか、子宮筋腫があるために形がいびつだったり、陣痛が弱い場合などは、その経過を観察し、あまりに進まなければ帝王切開して赤ちゃんを出してあげる場合もあります。
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このように、赤ちゃんは様々な工夫をして生まれてきます。これからお産を迎える方には、ママだけが陣痛に耐えているのではなく、赤ちゃんも一緒に頑張っているということをぜひ知っておいていただきたいと思います。
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