この記事は、完全母乳育児についてまとめたものです。「完母(かんぼ)」と略されることも多い完全母乳育児。完母にはたくさんのメリットがありますが、母乳がすべてという思い込みは時に危険なことも。メリットとデメリットを知った上で、自分なりの母乳育児をしたいものですね。
完全母乳育児とは?
完全母乳育児とは、育児用ミルクを使わず母乳のみで育てること。離乳食がスタートする生後5~6ヶ月まで、栄養源は母乳だけです。
WHOによる定義 WHO(世界保健機構)は完全母乳育児を以下のように定義しています。
・主に摂取するもの/母乳(搾乳、もらい乳を含む)
・摂取可能なもの/ビタミン、ミネラル、薬剤
・その他のものは摂取しない
この定義だと、水や経口補水液も飲むことはできません。
また、WHOは母乳育児について「生後6ヶ月までは完全母乳育児を行い、その後は適切な食事を補いながら2歳かそれ以上まで母乳育児を続ける」ことを推奨しています。
産後1年ほどで職場復帰するママが多いなど、日本の現状を考えると少し無理があるメッセージかもしれませんね。
水が不衛生な国と、日本との違い
世界にはまだ水道や医療設備が整っていない地域も多く、不衛生な水で作ったミルクを飲んだ赤ちゃんが感染症で亡くなるケースが後を絶ちません。WHOの定義は、そうした国々をも念頭に置いています。
もちろん、母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養源です。完全母乳育児でママも赤ちゃんもハッピーなら、何も問題はありません。
でも、「母乳さえ飲んでいれば大丈夫」「ミルクを飲ませるのは赤ちゃんによくない」とかたくなに思い込んでいると、赤ちゃんを栄養不良の危険にさらしたり、ママの気持ちが追い詰められてしまったりすることがあります。
途上国・先進国を問わず、世界中の子どもの健康のために発信されたメッセージと、日本の育児の現状との間には、時にギャップがあることも頭に入れておくといいですね。
完全母乳育児のメリット
完全母乳育児には、たくさんのメリットがあります。
赤ちゃんの感染症のリスクが減る
母乳には免疫力を高める成分が含まれているため、感染症にかかりにくくなります。
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが減る可能性
原因不明の突然死、SIDSのリスクが下がるのではないかと考えられています。
ママの産後の回復を早める
子宮収縮を促し、体重も戻りやすくなります。
女性特有のガン予防の可能性
子宮ガン、乳ガン、卵巣ガンのリスクが下がるのではないかと考えられています。
経済的な負担が小さい
育児用ミルクや哺乳瓶、グッズの消毒などのお金がかかりません。
完全母乳育児には実はデメリットも
授乳量がわかりにくい
哺乳瓶には目盛りがありますが、母乳はどのくらい飲んだのかがわかりにくく、十分な量が飲めていないことも。
栄養不足になるリスク
成長に必要な量が飲めていないと、栄養不足に陥る危険があります。
精神的なプレッシャー
完全母乳育児にこだわるあまり、気持ちが追い詰められて育児がつらくなるケースも。
他の人に授乳を代ってもらえない
夜中でも、ママの体調が悪くても、誰かに授乳を代ってもらうことができません。一人で外出することも、なかなかままなりません。
完全母乳育児の注意点
まだ言葉が話せない赤ちゃんは、何かを求める時に泣いて訴えます。ある赤ちゃんは母乳の量が足りず、空腹で泣きすぎて吐いてしまいました。ところがママは「吐くほど飲んでいるのだから母乳は十分足りている」と思っていたそうです。こういったことのないように、次の点に注意しましょう。
定期的に体重をはかる
ミルクを足さず、完全母乳で育児をすることの最大の不安要素は、成長に必要な量が飲めているかどうかがわらかないことです。赤ちゃんの体重をはかることを習慣づけましょう。
月齢が低い赤ちゃんほど、体重の増え方は順調な成長かどうかの一番の指標です。
【体重の増え方の目安】赤ちゃんの体重は、下記を目安に増えていきます。毎日はかって一喜一憂する必要はありません。1~2週間のスパンで、1日平均どのくらい増えているかを確認しましょう。
・生後0~3ヶ月/1日25~30g
・生後3~6ヶ月/1日15~20g
・生後6~12ヶ月/1日10~15g
* *ペリネイタルケア2017年夏季増刊「乳房ケア・母乳育児支援のすべて」(メディカ出版)より
成長曲線をチェックする
母子健康手帳に載っている成長曲線のグラフのページに、赤ちゃんの体重を記入していきましょう。たとえ体重が軽くても、成長曲線のラインに沿って増えていれば問題ありません。明らかに成長曲線のラインから外れてきたら要注意です。
母乳が出なくても自分を責めないで
母乳が出ない人や、赤ちゃんの成長に十分な量が出ない人はいます。周囲に口さがないことを言われても、「努力が足りない」「母親失格」などと自分を責めないでくださいね。
完全母乳はいつから?混合育児から切り替えるポイントは?
メリットやデメリットを知った上で完全母乳にトライしたいという場合、いつから始められるのでしょうか。答えは、生後すぐからです。
完全母乳育児はいつから始めてもいいのですが、なるべく生後3ヶ月以内にスタートしたいものです。それ以降になると、ラクに飲めるミルクからの切り替えが難しくなるからです。
生後1~2ヶ月のスタートがおすすめ
生後間もない赤ちゃんは、一度にたくさんのおっぱいを飲むことができません。おっぱいを飲むには顎や口内の筋肉をたくさん動かす必要があり、すぐに疲れてしまうからです。胃がとても小さく、すぐにおなかが一杯になってしまうということもあります。
一方、母乳は吸われれば吸われるほど出るようになってきます。赤ちゃんが吸ってくれることで母乳が作られる→それをまた赤ちゃんが吸うことでもっと作られる、というサイクルができてくるのです。
赤ちゃんがある程度飲めるようになり、母乳が十分に作られるようになるまでは時間がかかります。それまではミルクとの混合育児がラクかもしれません。
完全母乳育児にトライするなら、生後1~2ヶ月にスタートするのがおすすめです。授乳するときは母乳→ミルクの順で 混合育児の間も、母乳優先を心がけましょう。
授乳するときはまずおっぱい。ミルクはその後に
ママの乳房に比べると哺乳瓶は中身が出てきやすく、飲みやすいので、先にミルクをあげるとつい飲みすぎてしまい、おっぱいを飲まなくなりがちです。
1日8回以上、頻回に授乳する
完全母乳育児にするためには、赤ちゃんの成長に必要な量の母乳が出ていなくてはなりません。前述のように、母乳は赤ちゃんが吸えば吸うほどたくさん作られるようになってきます。母乳が十分に作られるよう、頻回授乳を心がけましょう。
目安は1日8回以上。24時間を均等に割ると3時間ごとの授乳です。これが最低ラインなので、もっと頻回に授乳してもOKということです。
特に夜中に授乳することで、母乳の分泌は増えていきます。生後しばらくは寝不足が続きますが、日中も昼寝をしながら、できるだけ頻回に授乳しましょう。
母乳育児のメリットは、「完全」でなくても与えてあげられる
乳児期の栄養はとても大切です。赤ちゃん時代は体だけではなく、脳の組織を発達させるためにも十分な栄養をとらなくてはならないからです。
完全母乳育児のメリットはたくさんありますが、そのメリットはたとえ「完全」でなくても赤ちゃんに与えてあげられるものです。少しでもミルクを足したら母乳育児のメリットは一切なくなる、などということはありません。
完全母乳育児は素晴らしいことですが、ママの気持ちがつらい時、そして体重の増えが悪い時には、どうぞミルクを足してあげてください。目安として、体重の増えが悪い状態が2週間続いたら、ミルクを足すことを検討しましょう。
記事を読む⇒⇒⇒
【母乳育児17の疑問】何時間おき?足りているかの目安は?授乳の痛みはどうしたらいい?気になることをまとめて解決!記事を読む⇒⇒⇒
母乳パッドのおすすめは?【最新】人気ブランド商品17選!ブラ内蔵タイプも紹介