日々、驚くほどのスピードで成長している赤ちゃん。いつ、どんなことができるようになるのかを、東京・町田市の「うみまちこどもクリニック」院長、大谷岳人先生にうかがいました。
「首すわり」と「おすわり」について解説した
前回に続き、今回は、「はいはい」と「たっち」「あんよ」。その時期に気になるママたちの疑問にもお答えします!
はいはい(満8~10ヶ月ごろ)
はいはいには、体の発達と「動きたい」という意欲、両方がたいせつ
生後8~10ヶ月ごろになると、うつぶせの状態からおしりを持ち上げる筋力がつき、体幹がしっかりすると同時に、腕を床について体を支えられる腕力もついてきます。さらに、足で床をけり、足を交互に出す動きもできるようになってきます。
こうして、赤ちゃんの発達が首から肩、腰、足へと進んでくると、はいはいで移動できるようになるのです。そして、はいはいにたいせつなのが、「あの場所まで行きたい!」「動きたい!」という赤ちゃんの意欲です。
赤ちゃんがはいはいを始めたら、ぜひ、ママやパパもいっしょにはいはいをしてみてください。赤ちゃんの目線になると、何がどのように見えるのかがわかって楽しいですよ。親子で並んで、同じ進行方向へはいはいをする遊びも喜ぶでしょう。
ただ、はいはいを始めて行動範囲が広がると、床に落ちているものを誤飲することがあります。赤ちゃんがはいはいをする場所に危険なものが落ちていないか、常にチェックを忘れずに。
なお、はいはいは発達が順調かどうかを見る重要なポイントではありません。はいはいをしないまま、おすわりからつかまり立ちへと進む子もいます。
はいはいのスタイルも四つばい、ずりばいとさまざまです。そのため、赤ちゃんの運動発達の中でも、個人差がいちばん大きいのがはいはいです。生まれてしばらくは、自分の意思で自由に体を動かすことができません。動きもぎこちなく、手足をバタバタさせるときには左右対称に動かします。
ずりばい
腹ばいで、腕に体重をかけて体に引きつけるように力を入れます。前進するつもりがバックしてしまう子も。
▼▼腕やひじでこぐようにして重心を前に移動。その勢いでおなかをすべらせながら前進します。手だけで進む子もいれば、足で床をけって進む子もいます。
四つばい
片方の手を前に出し、手のひらを床につけると同時に、反対側の足をひざから前に出します。
▼▼手と足を交互に出す動きをしながら、目の前の目標に向かって進んでいきます。発達が頭から足まで進み、全身を使うことで前に進めるのです。
はいはいのころ「ココが気になる」Q&A
Q.前に進めず、後ろにずりずりと下がってしまいます(7ヶ月)A. 足で床をじょうずにけることができないのでしょう。うつぶせにして足の裏を壁につけてけらせてみたり、ママが赤ちゃんの足の裏を押してあげたりしてみましょう。床をけるコツさえつかめれば、前進できるようになるはずです。
Q.手だけで進んでいるのは、足の力が弱いから?(8ヶ月)A.これは足の力が弱いというより、その子の動き方の特性です。うちの長男も、最初は手だけで進んでいました。移動ができているなら心配いりませんが、腹ばいのときに足の裏を押したりして、足でける練習をしてみても。
Q.鏡の中の自分が「自分」とわかるようになるのは、いつごろ?(8ヶ月)A.6ヶ月~1歳くらいと、かなりの幅があります。赤ちゃんのほっぺにシールを貼り、鏡を見せたときにほっぺをさわれば、「自分だと認識できている」とわかります。うちの長男は1歳半ごろ、認識できていました。
Q.おしりを上げた体勢ではいはいしますが、つらくないの?(9ヶ月)A.赤ちゃんの動きにはそれぞれ特性があり、はいはいも赤ちゃんごとにいろいろなスタイルがあります。四つばいやおしりを上げた高ばいのほか、片足だけ立てたはいはいをする赤ちゃんもよくいます。自分が動きやすい体勢ではいはいをしているはずなので、大人にはつらそうに見えてもそれがラクなのでしょう。
Q.はいはいをしないまま、つかまり立ちを始めてしまいました(9ヶ月)A.はいはいは、発達上のポイントではないので、しなくてもつかまり立ちができればいいのです。ただ、はいはいをしないと手に筋力が十分につかず、転んだときに手がサッと出なくなることも。四つばい体勢の赤ちゃんの足を持ち上げ(手押し車)、手だけで体を支えるような遊びをときどきすると、手に筋力がつきますよ。
Q.何ヶ月までにはいはいをしなかったら、小児科に相談するべき??(10ヶ月)A.はいはいをしなくても、相談の必要はありません。ただ、室内につかまる場所が多い、移動するスペースがないなどで、はいはいの必要がないためにしないこともあります。はいはいをするのに十分な広さがあるか、環境を見直してみては。はいはいしないうえ、1歳までにつかまり立ちもしないときには相談しましょう。
つかまり立ち・伝い歩き(満8ヶ月~1歳ごろ)
足まで発達が進んで立てるように。好奇心も加わると伝い歩きへ
生後8ヶ月~1歳ごろになると、何かを支えにして立ち上がる、つかまり立ちが始まります。このころには、発達が腰から足まで進んできて、自分の体重を支えられる筋力が足についてきます。
同時に、足の指を広げて足の裏全体を床につけ、体重を支えてバランスがとれるようになり、立てるようになるのです。
また、視力の発達によって少し遠くが見えるようにもなり、高い場所にあるものに目が届き、興味をもつようにもなります。心も発達するので、少し離れた場所にあるものを取りたい、さわりたい、という欲求がきっかけとなって、家具などを伝って横に移動する伝い歩きが始まります。
つかまり立ちができるようになったら、さらに足腰に筋力がつくように、布団を積み上げて山をつくり、のぼらせるような遊びを思い切りさせてもいいですね。
ただ、つかまり立ちや伝い歩きをマスターすると、はいはいのころからさらに行動範囲が広がって、低いところだけでなく高い場所にも手が届くようになります。この時期は、テーブルの上にあるものを誤飲したり、ポットや鍋などを倒して頭にぶつけたりやけどしたり、という事故も多いものです。
事故防止のため、赤ちゃんの手が届きそうなところをチェックして、常に片づけておくように心がけましょう。
つかまり立ちから横移動へ
適度な高さの家具などに手をかけ、最初は腕の力だけで立ち上がろうとします。
▼▼腕と足の力を同時に使い、イスを支えにつかまり立ち。最初は足の力が弱く不安定ですが、足の裏全体で体重を支えてバランスがとれるようになると、安定します。
▼▼つかまり立ちが安定すると、少し離れた場所にあるものをさわりたい!という興味や好奇心がきっかけで伝い歩きを開始。慣れるにつれて、移動も速くなります。
つかまり立ち・伝い歩きのころ「ココが気になる」Q&A
Q.早い時期から立つと、足腰に負担がかかってよくないって本当?(7ヶ月)A.発達が進み、足腰に筋力がついてきて、自分でつかまり立ちをしたのであれば、足腰に負担がかかることはありません。ただし、立ち上がるのに必要な筋力が不十分な時期に立たせると、足に負担がかかる心配もあります。あまり早くから、無理に立たせるのはやめましょう。
Q.はいはいばかりで、つかまり立ちをする気配がありません(9ヶ月)A.つかまり立ちは1歳までにできればいいので、9ヶ月であればもう少し発達を待ちましょう。ただ、9ヶ月ごろになると、高い場所にあるものに興味を示して、家具などに手をついて立ちたがるそぶりを見せることもあります。そんな様子が見られたら、手の届きそうな高い場所におもちゃなどを置いて興味を引いてみると、つかまり立ちをすることがあります。
Q.つかまり立ちはするのに、伝い歩きを始めません(10ヶ月)A.伝い歩きをするには、体を支える筋力がついて体幹がしっかりしたうえに、横へ移動したくなる興味や好奇心もたいせつです。赤ちゃんの興味を引くように、つかまり立ちをしている場所から少し離れたところにおもちゃなどを置いてみましょう。ただ、10ヶ月でつかまり立ちができているなら、まだ伝い歩きをしなくてもあせらず、発達を待っていいですよ。
Q.つかまり立ちのころに、おすすめのおもちゃは?(9ヶ月)
A.つかまり立ちをすると、視線が高くなって視野が広がるので、立ったまま遊べるおもちゃがよいでしょう。たとえばプレイジムはつかまり立ちで遊べるおもちゃがついていて、楽しめますね。上からボールを入れて、下から出てくる様子を見るようなおもちゃも喜びます。
Q.何カ月までにつかまり立ちしなかったら、小児科に相談するべき?(11ヶ月)A.つかまり立ちは、運動発達上のとても重要なポイントです。はいはいまでができても、つかまり立ちができないと、その後の発達に影響することがあります。1歳になってもつかまり立ちをしないときは、小児科で相談しましょう。1歳児健診のときに相談してもいいですね。
たっち・あんよ(満1歳~1歳6ヶ月ごろ)
足の筋力がつくとあんよがスタート。最初は手を上げて歩きます
頭から始まった発達が足まで進むと、生後1歳~1歳6ヶ月ごろには支えなしで立ったり、あんよができるようになります。
つかまり立ちや伝い歩きのときよりさらに体幹や手足に筋力がつき、体が傾いたときに足を出してふんばってバランスがとれるようになっていると、支えがなくても立つようになるのです。
やがて、たっち(ひとりで立っている)状態から、つかまるものがない場所でおもしろそうなものを見つけたときなどに、最初の一歩が出るでしょう。歩き始めるには、発達が進んで体の準備がととのっているだけでなく、はいはいや伝い歩き以上に「動きたい!」という意欲がたいせつです。
あんよを始める時期は、個人差がとても大きいもの。伝い歩きから最初の一歩が出るまで1ヶ月以上かかる子もいますが、伝い歩きまでできていれば、歩けないことはまずありません。時間は多少かかっても、心配せずに歩くのを待ってあげましょう。
歩き始めは、両手を上げたバンザイスタイルで、バランスをとりながらゆっくり足を出しますが、だんだん手の位置が下がり、やがて手でバランスをとらなくても歩けるようになります。
あんよができるとうれしくて、赤ちゃんはとにかく動きたがります。公園など広い場所で、思い切り歩かせてあげましょう。
たっち
つかまり立ちに慣れると、支えなしで座ったり、その状態から立ち上がろうとします。
▼▼ひとりで立てるようになっても、しばらくは不安定。少し動いただけでグラグラすることもありますが、安
定して立てるようになると、いよいよ一歩が出ます。
あんよ
▼▼足腰がしっかりしてバランス感覚もついてくると、手でバランスをとらなくてもスタスタと歩けるように。小走りや後ずさりなどもできるようになります。
たっち・あんよのころ「ココが気になる」Q&A
Q.大人のまねをして「バイバイ」などをするようになるのは、いつごろ?(1歳)A.大人のまねっこをするのは、早い子で7ヶ月ごろから。1歳までには、大人をまねるような何らかの動きをするようになります。いつごろからどんなまねをするかは、赤ちゃんの個性によって違います。「バイバイ」はしないけれど「パチパチ」はするなど、赤ちゃんによって得意・不得意があるようです。
Q.伝い歩きまで早かったのに、最初の一歩がなかなか出ません(1歳1ヶ月)A.慎重な性格などで、最初の一歩がなかなか出ない子はいるものです。伝い歩きまでしていれば、その後の発達への影響はまずありません。1歳6ヶ月ごろまでに歩ければいいので、気長に見守ってあげましょう。少し離れた場所におもちゃを置くなどして、あんよを促してもいいですが、こわがっているときや、やる気が見られないようなときには、無理じいをしないで。
Q.あんよがじょうずになるよう、手押し車などを用意したほうがいい?(1歳1ヶ月)A.手押し車で遊ぶと、バランスをとる練習にはなりますが、あんよの上達につながるわけではありません。手押し車を押して歩くのは、実際のあんよとは足の使い方が違うので、あんよに興味をもたせるきっかけの一つと考えましょう。
Q.よちよち歩きを始めました。よく転ぶので頭を打たないか心配です(1歳2ヶ月)A.よちよち歩きで転んだとしても、大きなケガをすることはまずないので、心配しすぎないで。ただ、あんよ初心者のため、階段など高さのある場所から落ちたり、転んだ拍子にテーブルの角などに頭をぶつけたりすると、大きなケガにつながります。あんよを始めたら、高い場所に上がれないようにしたり、家具の角にクッションをつけるなどの対策を。
Q.ボール遊びができるようになるのは、いつごろ?(1歳3ヶ月)A.ボールをつかんだり投げたりするのは、大人には簡単なことですが、実は発達が手指まで進んではじめてできること。特に、持ったボールを手から離して投げるのは、赤ちゃんにとっては難易度が高いのです。ボールが投げられるようになる1歳6ヶ月ごろからなら、ボール遊びも楽しめるでしょう。
Q.いつまでに歩かなかったら、小児科に相談するべき?(1歳5ヶ月)A.あんよができる時期は個人差が大きいのですが、1歳6ヶ月までに一歩も出ないようであれば、小児科で相談しましょう。慎重な性格で一歩が出ない子もたくさんいます。伝い歩きまでできていればまず問題はありません。とはいえ、それまでの運動発達の状況もふまえて、発達が順調かどうかを見てもらうと安心です。1歳6ヶ月健診時に相談してもいいですね。
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撮影/松木 潤(本誌写真課) 取材・文/村田弥生