日本人初、乳幼児睡眠コンサルタント・愛波文さんの、科学的根拠に基づいた睡眠メソッドを紹介する連載。
今回は、「セルフねんね」をはじめとした「ねんねトレーニング」の効果と、トレーニングをしなくてもいくつかのことに注意するだけで改善する「夜泣き」「寝ぐずり」について科学的に説明していただきました。
「ねんねトレーニング」の一種、「セルフねんね」って?
「ねんねトレーニング」と聞くと、子どもを一人にして寝るまで泣かせる…というネガティブなイメージをもっている方が多いと思います。ただ、これは本来の「ねんねトレーニング」とは少し異なります。
本来のねんねトレーニングは「自力で子どもが落ち着き、一人で寝てくれるように導くこと」をいいます。そして、子どもが自分で落ち着くことができるよう、ひとりひとりの特性に合わせた様々なメソッドがあります。
例えば、ママ・パパ(保育者)の存在を次第にうすめていき「セルフねんね」を促す「フェイドアウトメソッド」というやり方、時間を決めてあやす「タイムメソッド」という方法、あえて泣きっぱなしにするやり方など、種類は実に多種多様。
(著書
『マンガで読む ぐっすり眠る 赤ちゃんの寝かせ方』でも、日本人にあったねんねトレーニングの方法を2つご紹介しています)
「ねんねトレーニング」の成果が出て、「セルフねんね(ママやパパが近くにいなくても、子どもが一人で眠れるようになること)」ができるようになれば、寝かしつけはぐんと楽になるはずです。
では、「セルフねんね」は必ず教えないといけないことなのでしょうか?
ママ・パパがつらく感じていないならトレーニングは不要!
もし今、ママやパパが「添い寝・添い乳・抱っこ・トントンで寝かせたい」と思っている場合、そのまま続けても構いません! 育児の世界では、子どものお世話をする大人たちがハッピーであることがとても大切だからです。
寝かしつけや自身の睡眠不足をつらいと思っていないならば、無理に子どもに「セルフねんねする方法を教えなくては!」などと思わなくても良いのです。
逆に、以下のことが当てはまるママ・パパ(保育者)は、「ねんねトレーニング」で睡眠改善をすることをおすすめします。
セルフねんねのトレーニングが必要な例
●添い寝・添い乳・抱っこ・トントンの寝かしつけがしんどい
●寝かしつけるのにイライラしてしまう
●自分自身が十分な睡眠がとれていなかい
●日中子どもがずっと眠そうで機嫌が悪い
●習慣的に、夜の入眠時間が22時を超えてしまっているライフスタイルの場合
「セルフねんね」のありがちな誤解
相談者の方のなかには「うちの子は私が隣にいればセルフねんねできます!」とおっしゃるママもたくさんいます。けれど、ママ・パパ(保育者)が隣にいないと眠れない場合は「セルフねんね」にはなりません。
「抱っこして、寝そうなときに置いたらセルフねんねします」というのだと「セルフ(一人)で眠っている」とは言えませんよね。
子どもが自力で入眠できるようになると得られる効果
では、「セルフねんね」トレーニングを行った場合、どのような効果があるのでしょうか?
様々な研究から、先ほどお話した「親の負担が減る」ということ以外にも、
●寝かしつけの困難を減少させる
●夜中に起きる回数が減る
●親子ともが長時間の睡眠を確保できる
●ママの精神状態を良好に保つ
●赤ちゃんの機嫌がよくなる
という効果があることが明らかになっています。
私自身、長男の夜泣きと3時間の寝かしつけに悩み、睡眠の土台を整えてから生後10ヶ月で息子に「セルフねんね」トレーニングを行ったところ、たった4日で「セルフねんね」をマスターし、夜通し寝てくれるようになりました。
それまで寝かしつけの時間が怖くて子育てがしんどかったのが、息子が自力で入眠できるようになってからは子育ての仕方が180度変わり、息子が心からかわいいと思えるようになりました。
寝かしつけの時間も幸せいっぱいの時間に変わり、ものすごく子育てが楽しくなったんです!
夜泣き・寝ぐずりはトレーニングなしで直る?
ただ、どんな睡眠トラブルのケースもすぐに「ねんねトレーニング」を行えばよいというわけではありません。子どもに何か睡眠にまつわるトラブルが起きたとき、「では今日から始めてみよう」と、いきなりトレーニングを行うのはNG。
そもそも、その子にはトレーニングは必要でないパターンもあります。
例えば夜泣き。実は、ほとんどのケースが「ねんねトレーニング」なしで改善できるんです。ただし、トレーニングなしでも夜泣きを改善させるためには、睡眠の土台が確立されていることが大切です。
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夜泣き&寝ぐずりに。睡眠改善でいちばん大切な「睡眠の土台」についてそもそも、赤ちゃんは生まれながらに「自分で眠る力」を持っています。お腹の中にいたときには、何の助けもなしで寝ていたくらいですからね。なので、赤ちゃん生まれてきた後も、私たちママ・パパ(保育者)がその「寝る力」をうまく引き出し、サポートしてあげることができれば、赤ちゃんも自然と一人で寝つくことができるようになります。
そのためにはまず、お腹の中と同様に赤ちゃんが安心できる睡眠環境を作ること、眠くなるタイミングを知ってそれに合わせた生活リズムをつくること、この2点が非常に大きな役割を果たします。
大人はなぜか「抱っこをしないと寝ない、添い寝しないと寝ない、トントンしないと寝ない…」と思いこんでしまっているふしがあります。
そして、そんな大人の思い込みから生まれた「ママやパパの助けを受けながら眠る」方法が、赤ちゃんにとっての新しい習慣になってしまうため、その習慣なしでは赤ちゃんが眠れなくなってしまうのです。
ですから、しみついてしまった習慣を改善していくためには、基本に戻り、睡眠の土台を一つずつ調整していくことが大切です。例えば、
●室温を赤ちゃんの心地よい温度に調整した
●赤ちゃんの活動時間を目安に寝かしつけをした
●昼寝のとき、部屋を真っ暗にした
など、睡眠の土台づくりに取り組んだ結果、「夜泣きの減少、睡眠途中に起きて寝ぐずり」などのねんねトラブルが改善されるケースがたくさんあります。
ですから、いきなり「ねんねトレーニング」をするのではなく、まずは睡眠の土台を見直して、赤ちゃんの睡眠改善に取り組んでみてくださいね。
「活動時間」について詳しくはこちら⇒⇒⇒
赤ちゃんが起きていられる時間はママが思うより短い!?【連載・愛波文の子どもの睡眠メソッド】_____
もちろん、今ママ・パパ(保育者)が赤ちゃんの睡眠に対してハッピーなら何もしなくてOK! ただ、私みたいに悩んでいたらまず睡眠の土台から少しずつ整え、睡眠改善を行ってみてください。
参考文献:(1)J.Martin et al, "adverse Association of Infant and Child Sleep Problems and Parent Health: An Aystralian Popuplation Study "Pediatrics 119(2007)(2) Hiscock at el, "improving Infant Sleep"(3)Jodi, A Mindell: Mindell et al "Behavioral Treatment of Bedtime Problems"(4) TheScience of Mom Alice Callahan, PhD