障がいがあってもなくても“コミュニケーション”が大切
―――転校した当初は受け身だったのですか?
「そうかもしれません。障がい者だと、こちらから何もしなくてもかまってもらえるじゃないですか。その当時、私自身がそうなりかけていたんだと思います。でも母は私をそういうところに立たせたくなかったんでしょうね。
誰かが助けてくれる状況がある中で 自分から何ができるのかできないのか、お願いしたいことはなんなのかを伝えていかないと分かってもらえない。傲慢な自分にならないというか、ある時々ではなっている自分もいるかもしれないけれど、きちんと謙虚に自分のことを伝えることが大事なんですよね。
私は障がい者の山本恵理です!車いすだからこうしてください!察してください!ということではなくて、自分ができることできないことを相手に伝える。そのような親子関係以外のコミュニケーションを中学2年生で学びました。
―――山本選手は「自分を主張することと相手を受け入れることはセットにならないといけない」とおっしゃっていますが、そう思う具体的なきっかけがあったのですか?
「きっかけはやはり中2のときです。転校した先に私と同じ病気、二分脊椎症の同級生がいたんですが、その男子はコミュニケーションが取りづらそうでした。つねに先生がその子のフォローしているから友達が近づけないという感じで。
同じ病気や障がいを持つ人たちを見ていて、社会の中でコミュニケーション不足で悩んでいることが多いなと感じています。だから、コミュニケーションのとり方を障がい者の方々や障がいを持つ子どもたちにたくさん教えてあげたいと思っています。
相手のことを受け止めながら自分のことをどう伝えるのかを、私の経験から伝えていきたいです」
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「一度は諦めたパラリンピック。今ふたたび“2024パリ”を目指しチャレンジしています!」現役パラアスリート選手・山本恵理さんインタビュー〈後編〉〈PROFILE〉山本恵理
●1983年5月17日兵庫県神戸市出身。ニックネームは「マック」。先天性の二分脊椎症により、生まれつき足が不自由で車いす生活を送る。9歳から水泳に取り組み、パラ水泳の近畿大会や日本選手権などに出場。カナダ留学を経て2015年より日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)職員に。パラサポが実施するD&I教育・研修プログラム「あすチャレ!」全体のディレクターとして、またプログラムの企画・講師業務、講演会などを行いながら、国内外の試合に出場中。パラパワーリフティング55kg級の日本記録保持者。