近頃よく耳にする「不確実性の時代」という言葉。テクノロジーの発展や社会情勢の変化、パンデミックや戦争などによって、将来の予測がしづらく、単純な解決策を導き出すのが難しい時代だと言われています。
そんな時代を子どもたちがたくましく生き抜くために必要なのが「非認知能力」。学力テストでは測ることができない、主体性や創造性やコミュニケーション力といった、“人生を豊かにするための能力”に注目が集まっています。
「アート思考」もその一つ。既成の概念にとらわれず自由に、自分なりの物の見方で答えを創り出していく思考法のこと。芸術分野だけではなく、ビジネスシーンでも個々の感性がより重視されてきているのです。
では、わが子にアート思考を身につけさせるには、いったいどうしたらいいのでしょう?多摩美術大学特任准教授で子どもアートプロジェクトにも関わる佐宗邦威氏によれば、「親子で一緒に絵本を読むのがおすすめ」とのこと。
「私たち大人は言語として概念化したものをベースにふだん活動しているのに対し、子どもは自分の体験や体感、イメージなどで概念を作っています。そうした大人が持つ概念がない状態で絵本に触れることは、アート思考を育てるには自然なフォーマットだと言えます」
だまし絵が楽しい!『くるっと だーれ?』
そうした中、「アート思考」を育てる絵本として人気を集めているのが『くるっと だーれ?』です。著者は、数々のベストセラーを手掛ける、かしわらあきお氏。単なる絵本ではなく、一つの絵柄が2通りに見える“しかけ絵本”です。
ふさふさの、黄色いたてがみが印象的なライオンが登場!
ところが…くるっと回して逆さにしたら、巣の中でおすわりしているかわいらしい小鳥が現れました。
こちらは、自慢げに羽を広げている美しいクジャク。
…と思ったら、絵本を回して見てみると、スミを噴き出しているタコに変身!という具合に、13パターンのだまし絵が掲載されています。
この『くるっと だーれ?』について、佐宗氏は「ただ親が読むだけでなく、『逆さにしたら何に見える?』と、身体と視覚を使いながらコミュニケーションできる点がおもしろいポイント」とオススメ。
7歳と3歳の2児の父でもある佐宗氏は、お子さんに絵本を読む際には、読んだ本の『何がおもしろかった?』など、読後のお子さんとの会話を重視しているそうです。
「絵本は我が家にとって大切なコミュニケーションツールのひとつです。想像力を働かせながら会話をすると、よりお子さんに深く伝わるものがあるのではないかと思います」。
また、佐宗氏によると、アート思考を育むのには、ぬり絵も有効。
「有名なアート作品などを、本当に簡単でOKなので親がスケッチして、子どもに『色を塗ってみよう』と渡してみてください。我が家では『パパが作ってくれたぬり絵だからやる!』と、すごく子どもが喜ぶんです」
『くるっと だーれ?』もシンプルな絵柄なので、親がスケッチをして子どもに色を塗ってもらうのにはうってつけ。
「『パパやママと一緒に完成させるぬり絵』ということで、子どもたちのやる気や思い入れも変わってくると思います。子どもたちの創造的な学びを親御さんもいっしょにぜひ楽しんでみてください」。
『くるっと だーれ?』著者:かしわらあきお
定価:1,210円(税込)