前の話を読む▶▶▶
子供は一緒に育てたいけど同性同士なので他人です。Uの場合|『虹色の未来』#4大学2年のとき、講義室で仲のいい友人が彼氏と大ゲンカしてしまい、フラれてしまったと大泣きしていたんです。みんなで話を聞いて励ましたんですが、どうして連絡がないことで彼とケンカになるのか、彼が他の女の子と喋っているだけで彼女が怒ってキレたのか、私にはよくわかりませんでした。
みんなは「わかるよ、どんなに忙しくてもLINEくらい返せよって思うよね」とか、「彼女がいるのに別の女とイチャイチャするなんて酷すぎる」とか言ってたんですけど……。
私にもそのとき彼氏はいたんですが、自分はどうして彼に対してそんな気持ちになれないんだろうと不安になりました。他の女の子が彼氏に対して抱いている感情が、どうやら私にはないんです。
高校のときからうすうす気づいてはいたけど、男の人と付き合っても嫉妬したり会えなくて寂しくなったことなんて一度もなかった。
自分って、もしかしてどこかおかしいのかもしれない……。人として、欠陥があるのかもしれない。
自分のことが知りたくて、学校の図書館で恋愛心理学やジェンダーについて書かれた本を読み漁りました。でもしっくりくる本と巡り会えなくてモヤモヤしたまま、自己愛が強すぎるのかも、と、この問題に無理やり蓋をしました。
本当は女の子が好きなのかもしれない、と予感はありました。でもそれを言葉にしたり、実際に行動する勇気がありませんでした。もし女の子と恋愛をして、違っていたらどうしよう。興味本位なんかで軽く恋愛しちゃダメだ、絶対に女の子を傷つけてはいけないと思っていたのです。
でも、大学を卒業する22歳の頃、深夜にあるドラマを見たんです。フジテレビで放送されていた『トランジットガールズ』、内容はガールズドラマ、つまりレズビアンが主人公のラブストーリーでした。
初回からもう目が釘付けでした。親同士の再婚により一つ屋根の下で義姉妹となった性格もルックスも好対照な2人が、反発しながらも恋を育んでいく姿……。胸の高まりを抑えることができませんでした。そして、ついに胸の鍵が開いてしまった。
私はずっと、こんな恋愛がしたかったんだ、私はこういうふうに、女の子と愛し合いたかったんだ……。涙が溢れました。
高校の時、先輩に感じてたあのなんとも言えない気持ち、不安定な高揚、あれは確かに恋だった。あのとき紛れもなく、私は先輩に恋をしていたんだ。
もう迷わない。女性と付き合いたい。それを選ばないと、自分は一生後悔する。
私はすぐに彼氏と別れ、女の子との出会いを探しました。もう就職するから経済的にも自立できる、そうしたら自分の思うように生きてもいい。もうこの気持ちを抑制することはできない、自分を解き放とうと心に決めたのです。
初めての彼女とはSNSで知り合いました。彼女は5歳年上の真面目そうな落ち着いた人で、私の好きなロングヘアー、ほっそりしたスタイルの人でした。
私たちは毎日長文のやりとりを交わしました。彼女は仕事を一生懸命していることや、軽い気持ちで付き合いたくないこと、できるだけ一緒にいる時間を共有したいなど、たくさん思っていることを真剣に伝えてくれました。
写真で見た通りの真面目な人です。だから私も軽く思われないよう、とても慎重になりました。毎日メッセージを交わすうちに、もう彼女の人柄に惚れていました。人って、文章から溢れ出るじゃないですか、いろんなものが。
そして、1ヶ月経った頃、ようやく彼女がこういってくれたんです。
「ゆうちゃんに、会ってみたいな」
「嬉しい!私も会いたいです!」
天にも昇る気持ちで、目一杯おしゃれをして待ち合わせの新宿駅に向かいました。彼女が現れるまで、めちゃくちゃ緊張して鼓動が暴れていました。
実際会ってみてどうだったか、ですか?やりとりの段階でもう好きだったけど、実際に会ったら大人な雰囲気も見た目もすべてタイプで、もっと大好きになりました。
食事の場所は彼女が居酒屋を予約してくれてました。緊張してはいたけど、心の底から楽しかったし、焼き鳥やビールもやたらと美味しくて、何を話したのか覚えていないけど、とにかく笑い続けていた記憶があります。
一緒にいるだけですごく楽しかった。そして後日、デートしたときに自分から告白して付き合うことになりました。初めての彼女です。
そして今まで男性には感じたことのない初めての感情をたくさん経験することになったのです。
なんでも許せるし、思いやれる。歴代の彼氏には3日間未読無視が当たり前だったLINEも彼女には即返してましたし、彼氏と約束してても友達から誘われたらドタキャンして友達と遊ぶとかも普通だったのに、彼女には絶対そんな失礼なことはできなかった。とにかく、彼女の優先順位が一番になりました。
彼女といたかった。男はほったらかしておけばいいと思っていたけど、女の子には優しくしたかったんです。