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2023.04.12

妊娠出産体験談・インタビュー

子供を授かったセクシュアルマイノリティ。家族と生きていくために必要なこと『虹色の未来』#10【最終話】

前の話を読む▶▶▶同性カップルでも子供が欲しい。それってエゴですか?『虹色の未来』#9

2023年春、私は妊娠8ヶ月となりました。妊娠初期はUちゃんも私も、せっかく授かった赤ちゃんに何かあってはならないとピリピリしてましたが、安定期に入り、ようやく気持ちにゆとりができて、YouTubeで妊娠を発表することができました。

噂に訊いていたよりつわりがひどく食欲もなく、起きているのも辛くてずっと横になっていました。

「少しでいいから何か食べなよ。欲しいものを言ってごらん、買ってくるから」

気の利くUちゃんは24時間、Uberみたいになんでも買ってきてくれます。私が1人で外出する時は送り迎えをしてくれるし、湯気の匂いが気持ち悪くてお風呂が苦手になったと言うと、髪を洗って乾かしてくれるまで手伝ってくれました。至れり尽くせりです。

全力でサポートしてくれる彼女と一緒に親になると思うと心強くて、初めての妊娠と出産の不安も薄れていきます。出産を終えたらきっとボロボロに疲れてると思うから、しばらく私は授乳だけやって、あとの家事は一切やらないと宣言したのですが、彼女は喜んで引き受けてくれました。

つわりがおさまるとそれまでの食欲不振が嘘のように、いろんなものを食べたくなりました。

でも体重を増やしすぎないように、赤ちゃんにきちんと栄養が行き届くように気を使っています。Uちゃんにはヒールの靴を禁止されました。

「れいちゃんすぐ転ぶからね。出産まで我慢しようね」

そうです、私なぜか、すぐ足がもつれて転んでしまうんです。前より自分を大切にしてすべてに気を配り、出産日を待ち侘びています。無事に赤ちゃんを産むこと、育てることに対して不安があるのは、普通のお母さんたちと同じです。

たくさん悩み、思い切って飛んだ先にやってきてくれた赤ちゃん。それは私たちの希望でした。初めてお腹の中から蹴られた瞬間の驚きと喜び……。母になるんだと実感が込み上げてきました。

先日の妊婦健診の結果、お腹の子の性別は男の子とわかりました。Uちゃんはもう素敵な名前を決めていて、お腹にたくさん話しかけています。

どんな子供になって欲しいか、ですか?
多くは望まないですが、あえて言うなら、自立心の旺盛な、好きなことを好きって言える子に育てたいです。私が母にそう育ててもらったように。

Uちゃんは、愛嬌のある、人の気持ちに寄り添える優しい子になってほしいと言います。彼女がそう育ててもらったように。

自分の人生を振り返ると、ふと思うことがあります。もしも私が男の人と付き合い、結婚したとして、果たして子供を産み育てるという選択をしたでしょうか?

私はUちゃんと出会うまで、子供が欲しいと思ったことが一度もありませんでした。友人の子供を見てすごく可愛いなと思っても、自分も産みたい、欲しい、とは全く思わなかったんです。

「れいは子供とか考えてるの?子供って本当に可愛くて可愛くて、人生変わるから」

「うん……、可愛いのはわかるんだけど、私は産まないかな……」

「ウソでしょ、なんで?おかしくない?将来子供欲しくないの?」

と聞かれたのですが、私からすれば、

「なんで子供が欲しいの?今のままが気楽でいいじゃん」

という感じでした。何にも縛られず自由にやりたいことをしたいし、いつでも思いつきでふらっとどこかに行きたい。

あの頃はわからなかったことが、ようやくわかりました。ママが2人、バリバリたくさん働いて、毎日笑いの絶えないハッピーな家庭を築きたい。

日々大きくなっていくお腹をさすりながら、好きな人と家族になれる幸せを噛みしめています。

私たちの生き方をわかってくれる人もいれば、そうでない人もいる。子供を産むことを応援してくれる人もいれば、厳しい意見の方もいました。それは当たり前のことです。みんなそれぞれ、どう感じるかは自由なのですから。

そして、多くの批判も覚悟していたけれど、こんな嬉しいコメントをもらったときは、2人して泣きました。最後にそれを紹介させてください。

『虐待やネグレクトの親もいる中、ありったけの愛情を注げる親なら、それが両性同性だっていいじゃないか。親の都合で子供を作って、その子をかわいそうだという意見もあれば、なんの問題もないと思う人もいる。みんなに賛成されることって難しいし、その必要もない。

どんなことでもやりたいことを有言実行できる両親のもとに産まれた子供は絶対幸せで、親を誇らしく思うはずだよ』

ずいぶんいろいろとお話ししましたね。たくさん聞いてくれてありがとうございました。私たちはママが2人の楽しい婦婦(ふうふ)になって、こんな形の家族もありだね、と理解してくれる人を1人、また1人と増やしていきたいと思っています。

私たちは好きなものは好きだと言い続けます。
他人を否定せず、受け入れたい。
争うよりも、抱きしめたい。

その先には誰もが生きやすい、虹色の未来が広がっていることを願っています。

あとがき ~筆者・藤原亜姫より~

私は自分の知っている小さい世界の事柄だけを『常識だ』と思い込んでいました。それはずいぶん長い年月をかけて作られた頑固な『当たり前の常識』ですから、何か大きな出来事や事件でもない限り、そう簡単に頭を切り替えることができません。ですが今回取材を重ねるごとに、私の常識は塗り替えられていきました。

女性と女性が愛し合い、子供を持つ選択をした。女性の一人は妊娠中である。

恥ずかしいことに、それを最初に聞いたときは想像もつかなくてそれこそ他人事でしたが、幼少期から恋愛遍歴まで彼女たちのことを知った今ではこう思います。

私が知らないだけで、そのような選択をしている同性カップルは徐々に増えているし、家族の形も確実に変化している。切望の末に産まれる彼女たちの子供は幸せに満たされて、小さな枠に囚われず自由に大きく育つだろう。

新しい物事を知る勇気と受け入れる前向きな姿勢、そして学び続ける真摯な心をなくしてはならない。なにも知らなくて、なにが起きているのかを知ろうともしなかった無知な自分が恥ずかしい。自分の『常識』だけが正しいと思ってはならないのだ。

お二人を知ったいま、私は生まれ変わったような不思議な気分です。あなたたちにお会いできて、本当に良かった。私は理解者になりたいです。古い価値観に捉われず、独創性のあるそれぞれの常識を尊重したいと思います。

たくさんの当事者の勇気と周りの理解や共感で、10年後には常識が塗り変わっているかもしれません。私もそれを望みます。それこそが誰もに優しい世界といえるのではないでしょうか。                                

Baby-mo編集部一同からのメッセージ

日本産婦人科学会の指針では、現状、同性カップルが生殖医療を受けることは想定されていません。(戸籍上男性と女性の夫婦に限定)

しかし、家族の形が多様化するなかで、子供を持ちたいと希望するカップルは増えているのも現状です。

私たちBaby-mo編集部は、生まれてくる子の福祉を第一に考え、指針を見直すための議論を始める必要があると考えます。

すべての子供が幸せであるよう願いを込め、皆様が何かを考えるきっかけとなれば幸いです。 

最初から読む▶▶妊娠7ヶ月。私たちが結婚できないのは同性カップルだかららしい |『虹色の未来』#1

エルビアンTVプロフィール

日本で一番チャンネル登録者数が多いレズビアンカップルのU(左)とREYAN(右)の2人組YouTuber。テレビやイベントなど多数出演。YouTubeTwitterInstagramで女の子カップルの日常を紹介中。

【文】 藤原 亜姫

2008年ケータイ小説史上、空前のアクセス数を誇った『インザクローゼット blog中毒』(河出書房新社)で作家デビュー。他著書には『夜が明けたら 蒼井そら』、『東京整形白書』などがある。人間の弱みや闇を独自の視点で痛快な物語に変える作家。

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