母子手当とは、児童扶養手当のことを指します。平成22年8月以降は父子家庭も手当の対象となり、「母子手当」という名称ではなくなりました。この記事では、母子手当とは何か、支給条件や支給額、計算方法、支給の時期などを紹介します。これからもらう予定の人だけではなく、現在もらっている人もぜひ読んで参考にしてください。
母子手当とは?
母子手当とは、ひとり親の家庭に支給されるお金のことをいいます。
厳密には「母子手当」という言葉はなく、現在は「児童扶養手当」となっています。
平成22年8月以前は父子家庭には支給されず、対象は母子家庭のみだったこともあり、その名残から「児童扶養手当」を「母子手当」と呼んでいる人は多いようです。
ここでは児童扶養手当=母子手当として解説します。
母子手当は、ひとり親の家庭を助けるための手当
母子手当は、お金が原因で子供の育成が不十分にならないようにするための手当ともいえます。
ひとり親が子供を育てながら、十分な生活費や学費などを稼いでいくことはとても難しいことです。
母子手当は、ひとり親の家庭が少しでも安心して暮らせて、子供が安心に安全な生活をする手助けとなります。
母子手当の支給対象は父子家庭や、父母に代わって子供を育てている人も対象
母子手当は母親だけでなく、父子家庭や、父母に代わって子育てしている人も支給対象です。
子供が18歳に達した日から最初の3月31日(年度末)まで、もしくは政令で定められた障害の状態であれば、20歳未満まで支給されます。
児童扶養手当のほかに、母子家庭や父子家庭であればもらえる手当として「住宅手当」や「医療費助成制度」などもあります。
これらは各市区町村独自の制度なので、助成内容については住んでいる地域の市役所や区役所などで相談しましょう。
母子手当の支給条件は?
母子手当の支給条件は、以下のいずれかにあてはまる児童を持つ父母、もしくは監護者になります。
ここでいう児童とは、18歳の誕生日から最初の3月31日まで、もしくは政令で定められた障害の状態である20歳未満が対象です。
●父母が婚姻を解消した児童
●父または母が死亡した児童
●父または母が生死不明の児童
●父または母から1年以上遺棄されている児童
●父または母が裁判所からDV保護命令を受けている児童
●父または母が1年以上拘禁されている児童
●婚姻によらないで生まれた児童(非嫡出子)
●棄児などで父母の存在が明らかではない児童
このいずれか1つにあてはまれば母子手当は支給されます。
母子手当が支給されないケースとは?
母子手当を支給される条件にあてはまっていたとしても、以下のいずれか1つに該当する人は、母子手当は支給されません。
●手当を受ける人、対象となる児童が日本国内に住所がないとき
●内縁関係など事実婚状態であるとき
●対象となる児童が里親に委託されているとき
●対象となる児童が児童福祉施設に入所しているとき(通園やショートステイは除く)
●母子家庭の場合、平成15年4月1日時点で支給要件に該当する日から5年経過しているとき
●手当を受ける人の所得が所得制限額を超えるとき
これらのうち1つでも該当する人は、ひとり親でお金に困っていたとしても母子手当はもらえません。
もし手当を必要としている場合は、居住する地域の市役所、区役所などに相談してみましょう。
ちなみに、平成26年11月以前は遺族年金、障害年金、老齢年金など公的年金を受給している人も母子手当が支給されませんでしたが、平成26年12月以降は、年金額が母子手当を下回るときには、差額分が支給されるようになりました。
母子手当の支給額はいくら?
母子手当の支給額は物価の変動等で毎年変わりますが、何万円単位で変わることはほぼありません。
ここでは2019年の母子手当の支給額等を解説します。
母子手当は全部支給される場合と、扶養親族の数や収入に応じて一部だけ支給される場合があります。
一部支給の場合、支給額がいくらになるのかは複雑な計算が必要です。
支給額の詳細は、住んでいる区市町村に問い合わせるのが確実です。
母子手当の計算方法
母子手当は請求する人の所得額と扶養親族の人数によって、いくらもらえるかが決まります。
母子手当がいくらもらえるのかを計算する手順は以下の通りです。
①所得額を計算する▼
②所得額と扶養親族の人数を照らし合わせ全部支給か一部支給か確認▼
③一部支給の場合は支給額を計算する細かい計算もありますので電卓を用意して計算してみてください。
①所得額を計算する所得額の計算式は以下のとおりです。
所得額=年間収入額+養育費ー必要経費ー80,000ー諸控除年間収入額とは、給与所得控除後の金額です。
会社などから給与をもらっている人は、源泉徴収票の支払い金額を参照してください。
源泉徴収票は毎年12月に発行されるので、いちばん新しい昨年12月のものを見てみましょう。
養育費は、対象となる児童の父もしくは母から養育に必要な費用をまかなうための金品です。つまり、離婚した相手からもらっている養育費のこと。
ここでの養育費は、その金額の8割を所得とみなし0.8をかけた額になります。
必要経費とは給与所得控除額などのことです。給与所得控除額は以下の表のように計算します(令和2年分以降)。
80,000円は社会保険料、生命保険料相当額で年収に関わらず固定額です。
諸控除は以下の表を参考にしてください。
※みなし適用を含む
自分に当てはまる金額を計算式に当てはめて所得額を算出しましょう。それにより全部支給か一部支給か変わります。
②全部支給か一部支給か、確かめよう上で算出した所得額と扶養親族の数によって、全部支給か一部支給かが分かります。
扶養親族とは、年末調整で扶養親族として申告をした人のことを指します。
この扶養人数と先ほど計算した所得額を以下の表に照らし合わせ、母子手当が全部支給になるのか一部支給になるのかを調べましょう。
全部支給に当てはまる人は児童1人の場合4万2,910円、2人の場合5万3,050円、3人以上になると4万2,910円+3人目以降1人につき6,080円が支給されます。
一部支給の人は、さらに計算が必要となります。
③一部支給の計算方法一部支給の人の支給額は以下のように計算して算出します。
一部支給の支給額=全額支給額ー(所得額ー全部支給の所得制限の限度額)×その年の掛け率その年の掛け率も変動します。
ちなみに、平成30年度の掛け率は、0.0226993です。
母子手当の対象児童が増えると掛け率や計算式がかわってきます。くわしくはお住まいの市役所や区役所などで相談してください。
一部支給の場合、条件によって計算式や掛け率が変化するので、正しい額を計算することは難しいでしょう。
大まかでも知りたい人は、インターネットで利用できる自動計算サイトなどを利用するのがおすすめです。
母子手当はいつ頃支給される?
母子手当の支給は、令和元年11月から年に6回、奇数月に2ヶ月分をもらえることになりました。
それ以前は年に3回、4ヶ月です。
こまめにもらったほうが、やりくりがしやすくなり便利だと感じる人は多いのではないでしょうか。
令和元年11月以降、母子手当がもらえるスケジュールは以下の表の通りです。
支払い月=1月/3月/5月/7月/9月/11月支給日は各市町村によって変わりますが、中旬であることが多いようです。
支給は現金ではなく銀行振込みで行われます。
母子手当に必要な「現況届」は?
母子手当の支給が認められたあとも、毎年「現況届」を提出しなければなりません。
現況届は、その年の母子手当を支給するかどうかを決めるために、前年の所得額などを報告するものです。
現況届には添付書類が必要となりますが、どの書類が必要なのかは受給者によって変わります。くわしくは居住する区役所や市役所などに相談しましょう。
この現況届により、引き続き母子手当が支給されることが決定すると、新たに証書が発行されます。
いつ現況届を届けるのかは各市町村によって異なりますが、8月末までに届け出る市区町村が多いようです。
基本的には各市区町村が定める締切日を守りましょう。
届出期限を過ぎてしまっても、母子手当は受けられますが、受給日が遅くなることがるので注意しましょう。
母子手当をもらうときの注意点
母子手当はひとり親家庭にとって大切な手当です。
しかし、いくつか注意点を守らないと受給資格を失ったり、返金が必要となったります。
母子手当をもらうときの注意点は以下のものです。
現況届は必ず提出する
母子手当の支給が決定したあとに毎年提出する必要のある現況届ですが、申請時から状況が変わらないとしても必ず提出しなくてはなりません。
2年続けて提出しないと母子手当を受けられなくなってしまいます。
必要書類があったり記入箇所が多かったりと大変ですが、忘れずに提出するようにしましょう。
5年経過すると半分に減額される可能性がある
母子手当は、次のいずれかどちらか早いほうの翌月から半分に減額となることがあります。
●支給開始月の初日から5年
●離婚や配偶者の死亡など支給条件に該当した月から7年
該当の日になると支給額が必ず半額になるのではありません。
必要書類とともに「一部支給停止適用除外事由届出書」を提出すれば、引き続き母子手当を受けられます。
一部支給停止適用除外事由届出書を出すことができる人は以下の条件のいずれかに該当する人です。
●就業している
●求職活動もしくは自立に向けた活動を行っている
●児童扶養手当法施行令別表第一に定められた障害状態である
●病気やケガ、要介護状態で就業できない
●看護している児童もしくは親族が病気やケガなど介護が必要な状態で就労できない
「障害状態」とは、視力や聴力、言語機能に障害がある、身体的に一部を欠いている、精神疾患といった状態です。
児童扶養手当法施行令別表第一には細かくどのような障害状態かが決められています。
母子手当が半額となるタイミングは、各市区町村から「重要なお知らせ」として通知されます。
このような通知がきた場合は、引き続き受給できる条件を満たしているのかを確認し、該当していれば一部支給停止適用除外事由届出書を提出しましょう。
一部支給停止適用除外事由届出書の提出を忘れてしまうと、受給額が半額になってしまいます。
状況が変わればその都度、届け出を出す
次のような状況になった場合は、市区町村に資格届もしくは減額届の提出が必要です。
●結婚や事実婚をした
●親もしくは子の住所が日本国外になった
●請求者もしくは対象児童の死亡
●対象児童が児童福祉施設に入所した
●請求者もしくは対象児童の障害の程度が手当の基準に該当しなくなった
●対象児童の養育をしなくなった
●対象児童が結婚した
●棄児の児童が棄児ではなくなった
●父母の拘禁が終わった
このような状況になると、母子手当の支給が終了、もしくは減額になります。
届出を出さずに母子手当をもらっていると不正受給となり、のちに返還しなくてなりません。
逆に、養育する児童や扶養親族が増えたり、収入が減ったりしたときも届出が必要です。
このような場合は、支給額が増える可能性があります。
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過不足なく母子手当(児童扶養手当)の支給が受けられるよう、要件をしっかりと確認したいですね。
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