赤ちゃんの脳を育てるってどういうこと?子供の持つ力を最大限に引き出してあげるために親ができることは?発達脳科学者の成田奈緒子先生に、脳の仕組みや、赤ちゃんの脳をのびやかに健やかに育てる「脳育て」について教えてもらいました。
脳育ては「心育て」。幸せな人生の土台になります
脳って、何だと思いますか?私は「心」だと思います。脳を育てることは、心を育てることと同じなのです。では、「心が育つ」とはどういうことでしょうか。
それは、思いやりや思慮深さ、向上心や努力、自立心といった、「人間として高度な心の機能」を持つ大人になるということだと思っています。これこそが、子育てのゴールともいえるのです。
逆にいえば、脳が健やかに育っていなければ、人としての育ちも難しいということです。脳育ては、幸福な人生の土台をつくる重要な仕事なのです。
でもそれは、赤ちゃんのうちから知識を増やしたり、記憶力を高めたりするということではありません。それはあくまで、脳の働きの一部です。
「おりこうさん脳」「からだの脳」「こころの脳」の働き
脳には主に3つの働きがあります。
●おりこうさん脳●話したり、手先を動かしたり、考えたりする知的な働きをする脳。言葉や知能の発達を促す脳で、1歳ごろからゆっくり発達します。
●からだの脳●体温や姿勢、呼吸や発汗、睡眠や食欲といった体の機能をつかさどる、生命維持や本能にかかわる脳。動物がみんな持っている脳で、最初に育つ部分です。
●こころの脳●コミュニケーションや社会性をつかさどる脳。人を思いやったり、想像力を働かせるといった人間らしい脳は、10才歳ごろから完成に向かいます。
この3つのうち、どれが欠けていても「人間としての高度な心の機能」を持つことは難しいのです。
脳育てとは「大人と同じ数の神経細胞をつなげていく」こと
赤ちゃんの脳がつくられ始めるのは、妊娠18日目。つまり、受精直後です。
最初の脳はわずか2ミリの小さな管にすぎませんが、ママのおなかの中で目まぐるしいスピードで成長し、誕生までには大人とほぼ同じ数の脳細胞がつくられるまでになります。
脳の形も大人とまったく同じ。大きさは大人の4分の1程度ですが、赤ちゃんの脳は生まれた直後からとても高度なものなのです。
ところが、生まれたての赤ちゃんは、大人のように話すことも歩くこともできません。それはどうしてかというと、脳の中で情報伝達がほとんど行われていないからなのです。
脳の中で情報処理を担っているのは、神経細胞(ニューロン)です。140億~200億のニューロンが、それぞれ複雑に結びつき、情報を伝え合うことで、巨大な情報ネットワーク「大脳」が完成するのです。
でも、赤ちゃんの脳のニューロンは未接続状態。イメージとしては、膨大な数の駅だけ先につくって、線路を敷くのはそのあと…という感じでしょうか。
つまり、「脳を育てる」というのは、ニューロン同士のつながりをつくっていくことと同じ意味なのです。
脳は6才で大人とほぼ同じ大きさなります
神経細胞ニューロンはどうすればつながるのでしょうか。それは「五感からの刺激」です。
何かを見たり、聞いたり、感じたりすると、その刺激は電気信号となってニューロンに送られます。ニューロンは細い枝のような「樹状突起」を伸ばして、刺激の電気信号を別のニューロンに伝えます。
このとき、2つのニューロンの間には「シナプス」という接続点が生まれます。シナプスで電気信号が「神経伝達物質」に変わり、お隣のニューロンに届けるのです。
赤ちゃんの脳のシナプスは1歳で最大に!
誕生直後、赤ちゃんの脳にシナプスはほとんどありません。刺激を受けるたびにシナプスが増え、神経回路が次々とつくられていくのです。
首がすわり、はいはいし、立って歩くようになり、おしゃべりできるようになるのも、シナプスが増え、神経回路がつくられた証拠なのです。
シナプスは生後6ヶ月までの間にものすごい勢いで増加し、1歳の時点で最大になります。それを過ぎると、不要なシナプスは刈り込まれ、整理整頓され、脳は効率よく働き始めます。脳の情報伝達が、非常にスピーディーになるのです。
こうして脳は、6歳くらいまでに大人と同じ大きさに成長していきます。
子供を見て肌を触れ合わせることが、健やかな脳を育てる
乳幼児期の子育ての目的は、「小さな大人」を育てることではありません。
乳幼児期は「脳をのびやかに、健やかに育てる」ことが何より大事なことです。つまり、たっぷり眠って、しっかり食べて、笑ってじゃれ合って…たったそれだけで脳はすくすく育っていくのです。
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