子育てをしていると、ささいな子どもの言動にイライラしたり、思い通りに動かないことに腹が立ったりします。つい否定的な言葉をかけてしまうこともよくあること。
でもそれは、親自身の自己肯定感が低下している証拠なのだと心理カウンセラーの中島輝先生は言います。子育ては「親自身の自己肯定感の危機」と言う中島先生に、その真意をうかがいました。
子育ては未知の体験の連続。自己肯定感が揺らいで当然です
子どもの自己肯定感を育てることは、とても大切なことです。でもその前に、もっと大事なことがあります。それは、ママやパパの自己肯定感です。
前回の記事で、「コップを使った実験」のお話をしました。Aくんのママは「こぼしちゃダメよ」ときつく言い、Bくんのママは「持ってきてくれてありがとう」という点を強調していましたね。
この違いはどこにあるのかというと、それぞれのママの自己肯定感の高さにあります。Aくんのママは自己肯定感が低く、Bくんのママは高い。それがわが子の否定的な側面を見るか、肯定的な側面を見るかの違いに表れてしまうのです。
自己肯定感が低い親は、どうしてもわが子の失敗を恐れてしまいます。「危ないからやめなさい」「そんなことしちゃダメ」「なんで言うことをきかないの」と口うるさくなるのです。
ほかの子とも比較しがちなので、「なんであなただけできないの?」と言ってしまうかもしれません。子どもは常に親に否定されていると感じ、自己肯定感は年齢とともに下がっていくことでしょう。
でも、それはけっして親が悪いわけではありません。ここで知ってほしいのは、子育て期は誰でも自己肯定感が低くなりがちだ、ということです。子育ては未知の体験の連続ですし、生活も大きく変化します。
何よりもわが子への愛情が深いからこそ、心配になってしまうし、あせってしまう。それはやむを得ないことです。
大切なことは、「私の自己肯定感はいま、低くなっている」と気づくことです。
子育てという人生初の大仕事、心が揺れないはずはありません。もともと自己肯定感が高かった人でも、どんどん自信を失って自己肯定感が下がってしまうのこよくあることなのです。
まずはここで、自分の自己肯定感の高さを確認してみましょう。
あなたの自己肯定感をチェック!12問の問題に○か×かで答えよう
以下の質問にYESかNOかで答えてください。1~6の中に質問が2つずつありますから、番号ごとにYESがいくつあったかメモしておきましょう。
1
●朝、鏡を見るたびに自分のイヤなところを探してしまう YES/NO
●SNSを開くたびに、人からの「いいね」を待っている自分がいる YES/NO
2
●子どもが誰かに叱られたり注意されたりすると深く落ち込み、立ち直るまでに時間がかかってしまう YES/NO
●子どもに自分のペースを乱されると、些細なことでもイラっとしてしまう YES/NO
3
●ふとしたときに「無理「疲れた」「忙しい」「どうしよう」「いやだ」「つらい」といったネガティブな言葉がこぼれる YES/NO
●「ねばならない」「すべき」と考える傾向があり、したいことがなかなかできない YES/NO
4
●学校や幼稚園の先生やママ友などに言われた何気ないひと言が気になり、こだわってしまう YES/NO
●やるぞと決めたことなのに、周りの人の目が気になり、躊躇してしまうことがある YES/NO
5
●子どもに習い事をさせたいけれど、何がいいのかわからず決断できない YES/NO
●一度決めたことなのに、「本当にこれでよかったのか」と悩むことがある YES/NO
6
●新しいことに挑戦したくても「どうせ自分にはムリ」と勝手に限界を決めてしまいがち YES/NO
●電車から降りるときや、エレベーターに乗るとき、のろのろしている人をみるとイライラする YES/NO
自己肯定感を構成する「6つの感」、弱っているのはどれ?
自己肯定感は、6つの構成要素でできています。1本の木に根・幹・枝・葉・花・実があるように、自己肯定感にも「6つの感」があるのです。
先ほどのテストの1~6の項目は「6つの感」が高いか低いかをはかっています。YESの数が0なら「高い」、1つなら「中くらい」、2つであれば「低い」、となります。結果を確認してみてください。
1 自尊感情
自分には価値があると思える感覚。自己肯定感の根っこ。深く根をはやしていれば、多少の雨風でも揺らぎません。
高/中/低
2 自己受容感
ありのままの自分を認める感覚。木の幹であり、自分の軸になるもの。太くて頑丈であればあるほど、心を強く保てます
高/中/低
3 自己効力感
「自分にはできる」と思える感覚。木の枝部分なので、枝の数が多い(できると思えることが多い)ほどイキイキ育ちます
高/中/低
4 自己信頼感
自分を信じられる感覚。木の葉っぱ部分。信頼という養分が多いほど、葉がおいしげります
高/中/低
5 自己決定感
自分で決めることができる感覚。木の花に当たる部分で、主体性を持つことでその人らしい花を咲かせ、魅力になるのです
高/中/低
6 自己有用感
自分は何かの役に立つ存在であると思える感覚。人のため、社会のためになる喜びこそが、人生の幸せであり実りです
高/中/低
小さい頃に育てたいのは「自尊感情」「自己受容感」
テストをやってみて、ご自分の弱点がつかめたでしょうか。このようなチェックをすることで、自分という人間を少し離れたところから客観視することができるのではないかと思います。
「自分はいま、何かを決めることができなくなっているんだ。それはきっと、ママとしての自分に自信が持てていないんだ」
そんな気づきのきっかけになってくれれば幸いです。
子どもの自己肯定感も、この「6つの感」によって構成されています。
「6つの感」を木にたとえたのは、植物と同じように育つのに適した時期があると考えたからです。植物はまず根をはり、幹を育てます。枝がのびなければ葉っぱは出ませんし、葉っぱなければ花も実も育ちません。根が弱ると枝葉も枯れてしまいます。
そのように考えると、自己肯定感を育てるうえでもっとも大切なのは、根っこである「自尊感情」と、幹である「自己受容感」。子どもの頃にこの2つは、なんとしても育ててあげてほしいのです。
特に「自尊感情」は3歳くらいまでに育つと言われています。この時期に親に無条件で愛され、「自分は生きているだけで価値があるのだ」と思うことができた子は、成長して挫折や失敗があったときにでも「自分は大丈夫」と思えるのです。
「私は子どもの頃、親に大切にされてこなかった。だから自尊感情が低い。いまさら高めるのは無理」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。自尊感情、そして自己肯定感はいつからだって育てられるのです。
それについては、次回詳しくお伝えします。
➤➤➤中島先生のアドバイス「“自己肯定感ブーム”に警鐘!ホンモノの自己肯定感とは?」●PROFILE●中島 輝(なかしま・てる)心理カウンセラーで「自己肯定感」の第一人者。資格認定団体「トリエ」代表。心理学・脳科学・NLP(セラピーやカウンセリングの現場から生まれた実践的心理学)などの手法を用いて、Jリーガーや上場企業の経営者など15,000名を超えるクライアントにカウンセリングを行う。現在は、自己肯定感を高めれば人生・仕事・恋愛・健康・子育てが好転する「ナチュラル心理学」を提唱し、精力的に講座を開催している。著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感が高まる うつ感情のトリセツ』『書くだけで人生が変わる自己肯定感ノート』『自信スイッチ 10歳からはじめるポジティブ習慣39』など多数。取材・文/神 素子