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2023.04.03

妊娠出産体験談・インタビュー

同性カップル最後の恋。パートナーシップのメリット・デメリット。REYANの告白『虹色の未来』#6


そして3回目のデートは、2回目のデートのときに私が話した「水族館が好き」を覚えていたUちゃんがチケットを用意してきてくれました。

いつもより可愛く見えるようにおしゃれを頑張りました。待ち合わせた池袋駅の人混みで、Uちゃんだけが輝いて見えました。

私はUちゃんに付いていくだけでよかった。もう、お姫様気分でした。前にもサンシャイン水族館でデートしたことはあったけど、そのときとはときめきが全然違っていました。

なんて楽しいんだろう。そして、隣で微笑むUちゃんのカッコよさよ……。

一緒にいることがちっとも恥ずかしくなかった。むしろみんな見てと思った。こんなにキュンキュンするサプライズデート、初めてです。

顔が一番好きだけど、やることなすこと最高すぎる。そして会話も楽しくて中身もいいなんて、もう惚れない理由がどこにもない。

水族館の中でもさりげないスマートなエスコートをされて、私はもう完全にUちゃんの世界にハマっていました。

Uちゃんもわざわざこんな凝ったデートに誘ってくれるくらいなんだから、私に好意を抱いているに違いない。水族館の帰りに入ったカフェで、私から思い切って告白しました。

「Uちゃんのこと、大好きだよ。私と付き合って」

でも、Uちゃんは返事をためらっていました。

 「……すぐに返事しなきゃダメかな」

すぐに返事できない理由ははっきりわかりました。友人の元カノと付き合うなんて友達に悪いと、優しくて思慮深いUちゃんは悩んでいたんです。でも私は引き下がりませんでした。

「今付き合うか、この先二度と会わないか、決めてもらえる?」

と詰め寄ったのです。いきなりクロージングをかけられたUちゃんは、少し照れながらようやく、

「付き合おっか」

といってくれました。そのあとのことは覚えてないくらい、付き合える喜びでいっぱいでした。嬉しくて嬉しくて、はしゃいでいた記憶しかないです。

それからは私の部屋にUちゃんがしょっちゅう泊まりにきて、半同棲みたいな状態になりました。 料理が大の苦手なUちゃんに私はいろんなご飯を作ってあげました。

お米が大好きな彼女はものすごい量のご飯を食べてくれて、それもすごく嬉しかった。楽しい生活、甘い日々。

だけど付き合って3ヶ月経ったころ、私はUちゃんを試すようなことをしてしまいました。友達にある嫌なことを言われてすごく腹が立ってムカムカが込み上げて吐きそうになるくらいキレていたのに、友達には何も言えない。普段からそうです。

だけどUちゃんにはなんでも言えた。傷ついてショックを受けた私はその怒りや苛立ちすべてを関係のないUちゃんにぶちまけて、ひどい八つ当たりをしてしまったんです……。私は思いつく限りの罵詈雑言を叩きつけて走って逃げました。真夜中の新宿です。

「待って、れいちゃん!」

Uちゃんが追いかけてきました。サッカーをやっていたから足が速い。あっという間に追いつかれて鞄を掴まれましたが、私はその鞄を叩きつけて逃げました。

化粧品が割れる音がしました。

もういい、なにもかも壊れてしまえ。おしまいだ。

普通の人なら、きっとここで離れていきます。今までもずっとそうでした。いつも抑えつけてる本当の私を知ったら、みんな離れていくのです。親にすら見せなかった激しくて醜い自分。でも、Uちゃんは鞄を拾ってまた追いかけてきた。

「落ち着いて!れいちゃん!」

私はパニックを起こして走りました。これまでの恋愛では、私は無意識に相手の気持ちを試すような駆け引きをしていたところがありました。まだ若くて何者でもなかった私はときどき不安の渦に襲われて、メンブレを起こしてしまったんです。

どうせ人は、いなくなる。
どこまでやったら、あなたは離れる?
もう疲れたでしょう?
あなたもいなくなるんでしょ?
どうせフラれるなら、先に私からフってやるから!

けれど、彼女は違いました。

「れいちゃん、大丈夫だよ!私はそばにいるから!」

息が切れて倒れ込んだ私を、Uちゃんは強く抱きしめてくれました。

「れいちゃん、意外と足が速いんだね。あはは。……疲れたね。帰ったら一緒にお風呂に入ろうね。あったまってぎゅうして、一緒に寝ようね」

100パーセント私が悪いのに、Uちゃんは私を包んでくれました。早朝の道端でUちゃんに抱きしめられながら、私は「ごめんね、ごめんね」と号泣しました。

「大丈夫だよ、いい時も悪い時も支え合っていこうね」

私は、これまで感じたことのない愛を感じました。守られている。愛されるって、こういうことなんだ。やっとわかった。彼女は、今までの人たちとは全然違う。最低な自分を晒しても離れないし、別れない。私はちゃんと、愛されているんだ……。

そこから心が安定しました。体の真ん中に強い芯ができた感じです。家族にも言えない秘密も、彼女にだけは話せる。彼女は親友でもあるし、相棒でもある。こんな人、この世に1人しかいません。私にとってUちゃんは、かけがえのない存在です。彼女がいてくれるだけで私もずいぶんまるく、穏やかになりました。

いまでもときどき喧嘩をしてヒートアップすると、「もう別れる!」なんて言ってしまうこともあるのですが、Uちゃんは冷静にこう言います。

「頭にきた瞬間に別れるなんて決めちゃダメだからね。大切なことだからいったん離れて、時間をおいて落ち着いて考えて……。それでも別れたかったら、そのときだよ」

優しいですよね……。いつもこうして少し離れて、そして仲直りして、ちゃんと収まるべき場所に収まるのです。こんな人、他にはいません。これからもお互い言いたいことを言ってぶつかり合って、支え合い、労わり合える相棒でいたい。
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【文】 藤原 亜姫

2008年ケータイ小説史上、空前のアクセス数を誇った『インザクローゼット blog中毒』(河出書房新社)で作家デビュー。他著書には『夜が明けたら 蒼井そら』、『東京整形白書』などがある。人間の弱みや闇を独自の視点で痛快な物語に変える作家。

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