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赤ちゃん絵本を卒業し、文学としての絵本を楽しむということは、主人公の心をもらうという営み。自分ではない他のなにかになりきって、楽しかったり苦しかったりうれしかったり・・・自分じゃない経験をするということなんです。つまり「他人の気持ちがわかるようになる」ということ。
あと、絵本って登場するのは人だけじゃないですよね。動物や植物などのときもあるし、時代や国も違う。それらを自分の中に受け入れることで、相手にも自分にもやさしくなれるんです。
こうやって、さまざまなことを経験することが「心が豊かになる」ということだと思うんです。だから子供たちには、他の心をたくさんもってほしい。
これは震災などの被災地の方から聞いた話ですが、絵本に親しんでいる子とそうでない子は、心の回復に差があったそうです。絵本にあまり親しみのない子は、なかなか恐怖から抜け出すことができず、逆にふだんから絵本に親しんでいる子は、立ち直りが早かった。
それは、絵本によって他の心をたくさんもらっているから、自分を客観的に、かつユーモアをもって見られるからではないでしょうか。
絵本には、多様性を育み、生きる強さを与えてくれる、そんな力がある。いま赤ちゃん世代の子たちにも、そういうふうに育っていってほしいなと思っています。
(左)こみやさんが主宰する家庭文庫「このあの文庫」の絵本コーナー。「ブルーナの絵本がいちばん低年齢向け。こんなに言葉の響きにこだわった絵本はあまりないですね」(右)「日々の暮らしが淡々と体験できる、ウォージントンのくまさんシリーズもおすすめ」
こみやゆう●1974年東京生まれ。翻訳家。大学卒業後、児童書出版社に勤務。その後、留学をへて児童書の翻訳に携わる。2004年より東京・阿佐谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰。
撮影/土屋哲朗 『Baby-mo(ベビモ)2021年秋冬号』の内容をウェブ掲載のため再編集しています。※情報は掲載時のものです