国際化が進むなか、赤ちゃんの名前には日本国内だけでなく海外でも親しみをもって呼ばれる名前をつけたい、というパパやママが増えています。生まれてくる赤ちゃんの成長環境を想像し、「どの国に行っても親しまれるような国際色豊かな名前」を考えて名前を付けたはいいけれど、わが子が困惑する場面は避けたいですよね。
言語圏によってネガティブな意味にならないよう、かっこいい名前、可愛い名前のイメージを取り入れながら、注意すべき3つのポイントを命名研究家の牧野恭仁雄先生に教えてもらいました。
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名前も国際化が進んでいます
インターネットが普及し、企業の海外進出が盛んになり、それにともなって世界を飛び回るビジネスマンが増えています。また、子どもでも海外旅行や海外留学が当たり前になった今、わが子に世界で活躍する人間に育ってほしいと願う親は多いでしょう。
国内外にかかわらず、何かの分野で活躍するためには、人とのコミュニケーションが必要。そして、上手にコミュニケーションをとるには、親しみをもって名前を呼び合うことが不可欠です。国際化が進むなか、「外国風の名前」だったり「世界で親しまれる名前」に注目が集まるのも、自然な流れといえるでしょう。
外国人でも発音しやすく、読みやすい名前に
「世界で親しまれる名前」「海外で通じる名前」とは、日本語を母国語としない人と接したときにも不都合のない名前のこと。発音しやすい名前なら親しみをもって呼んでもらえるでしょうし、ローマ字表記で名前を書いたときにすんなり読めれば、すぐに名前を覚えてもらえるでしょう。
ただし、外国の名前を無理やり漢字にあてはめるなど、海外を意識しすぎて日本語的におかしくなっては本末転倒。「海外で通じる・親しまれる名前」は、まず「日本で通用する名前」であることが大前提です。
外国人が「?」と思ってしまう名前も。意味を考えるのも重要
最近人気の名前のなかにも、外国人が他の言葉と聞き間違えて「?」と思ってしまうものがあります。例えば、マオ→毛沢東、タイガ→虎、ケンヤ→ケニヤ、 マヤ→マヤ民族、マミ→お母ちゃん 、ショウ→見世物など。
他にも、ミサやマナは、キリスト教国では特殊な意味をもつ言葉ですし、ミウやミユウは、ネコの鳴き声を連想させることがあります。
また、○子や○美は女の子、○雄や○太は男の子というように、名前には男女の区別がありますが、これも国や言語圏によって変わってきます。
日本では女の子らしいミレイやアンリといった名前も、フランス語圏では男性によく使われますし、男の子名として人気のケイトは女の子に、女の子の名として人気のリオは男の子につけられる国もあります。
とはいえ、言語は世界に3000種類以上もあり、この国では変な意味があるとか、おかしく聞こえるとか言い出したらキリがありません。しかし、親や本人が「この名前は別の意味にとらえられる可能性がある」と知っていれば、その国では違う名前を使うなどの対策を立てられますから、知っておいて損はないはずです。
世界で親しまれる名前。考えるときの3つのポイント
日本だけでなく、海外で通じる・親しまれる名前をつけるポイントは、次の3つ。注意点も要チェック!
ポイント①外国人が発音しやすい音を選ぶ
「r」「v」「th」などの発音が日本人にとって難しいように、日本語を話さない人には発音しづらい、呼びにくい名前もあります。名前は繰り返し、たくさんの人に呼ばれるものですから、呼びやすい、発音しやすいことはとても大切。
呼びやすい名前=覚えやすい名前ですから、コミュニケーションもとりやすくなるでしょう。世界に通用する名前をつけたいなら、発音しにくいものは避けたほうが無難です。
●あおい(Aoi)⇒ 母音が3つ続くため、発音しにくい。
●はると(Haruto)⇒ フランス語圏など、一部の国ではHを発音しないこともあり、「あると」と読まれる。
●みう(Miu)⇒ 「ミュー」と、ネコの鳴き声のように発音されてしまう。
ポイント②ローマ字で書いたときに読めるように
日本語の名前を海外で使用する場合、通常ローマ字で表記します。このとき使われるのが、ヘボン式という表記法なのですが、ヘボン式には長音(のばす音)がありません。そのため、「ゆうき」も「ゆき」も同じYukiとなるので注意が必要です。
また、イタリア語・スペイン語圏では、「a」で終わる名前は女性、「o」で終わる名前は男性の名前に聞こえることが多いので、それも頭に入れておきましょう。
●そうま(Soma)⇒ 「そま」と同じ表記。イタリア語・スペイン語圏では女性の名前に思われやすい。
●かずみ(Kazumi)⇒ 「mi」がマイと読まれやすく、「かずまい」と呼ばれてしまうことも。
●けんいち(Kenichi)⇒ ローマ字にすると「ni」の部分がわかりづらく、「けにち」と読まれやすい。
●けいすけ(Keisuke)⇒ 英語圏では「e」で終わる名前は発音しにくく、「けいすき」と誤読されやすい。
【ヘボン式ローマ字表記に変換するときの注意点】★ 撥音/「ん」の「N」は次にくる文字がB・M・P の場合は「M」で表記
(例)ほんま→HOMMA
★促音/「っ」は子音を重ねる。ただし、CH の前では、「っ」は「T」で表記
(例)いっこう→ IKKO、はっちょう→ HATCHO
★長音/「O」や「U」は記入しない
(例)おおた→ OTA、くどう→ KUDO
ポイント③外国で他の意味にとられないかをチェック
日本では一般的な名前でも、外国では特別な意味をもつ単語になることがあります。たとえば、ゆう=you、しょう=show、あい=I、だい=die など。「あい」という名前の人が「I am Ai」と自己紹介したら、変な顔をされるかもしれません。
日本語の名前ですから気にしすぎる必要はありませんが、念のために辞書などで意味を確認しておくといいでしょう。
●ゆうだい(Youdai)⇒ 英語圏で「you die」に聞こえてしまうと、「死ね」の意味に。
●ゆき(Yuki)⇒ 英語圏で「yucky」に聞こえてしまうと、「非常に不愉快」の意味に。
●ふく(Fuku)⇒ 英語圏で「fuck you」に聞こえてしまうと、「くたばれ」の意味に。
●しほ(Shiho)⇒ フランス語圏では「し」「ち」はふん尿を連想させることが多い。