ダメなことはしっかりダメと言うべき?
菊地 もう一つ、子育てでいつも迷うのが、「ダメ」って言ってよいのか、よくないのかということで。「ダメだよ」って言わないほうがいいとよく聞くけれど、私は絶対言っちゃうんです。たとえば、娘がスナック菓子を袋からバーッとテーブルに出したりしたとき、とっさに「ダメだよ、それやっちゃ」と言ったあとに、「えっ、これももしかしたら、ダメって言っちゃダメなの?」って落ち込むんですよ(笑)。
てぃ先生 はい(笑)。
菊地 習い事などでも、お友だちの顔をたたいても「ダメだよ」と言わない親御さんとかを見ると、「私はダメって言いたくなっちゃう」と思うし。だから、何が正しいのかを知りたいです。
てぃ先生 なるほど。まずそれぞれの家庭によって、「これはいいけど、これはダメ」という線引きってあると思います。その中でも、たぶん、「自分や他人に対して危害を加えない。他人に迷惑をかけない」というのは、どの家庭でも共通するルールだと思うんですね。そこにふれる行為に対しては、「ダメ」ってきっぱり伝えていいと思います。よくないことをしたわけですから。
菊地 お友だちの顔をたたいちゃったりするのも?
てぃ先生 そうです。そういう場合は、たたいた子の気持ちを尊重する以前に、まずはその危ない状況を止めないといけないので、もうパッと止めに入っていいと思います。ただ、これは何ごとにも当てはまることですけど、「ダメだよ」と言ったあとに、「こうしようね」という正しい行動を合わせて伝えてあげないといけないんです。
菊地 それがないと、言われた子も、「なんで?」って思っちゃいますものね。
てぃ先生 はい。ただ否定するだけではわからないですから。そして、正しい行動を伝える際は、少しだけ言い方を工夫するといいです。どんなふうにすればいいかというと……試しに、ちょっと目をつぶってみていただいて。
菊地 はい(と目をつぶり)。
てぃ先生 「パンダを想像したらダメです」って言われたら、パンダを想像しちゃいませんか?
菊地 ホントだ、すぐ出てきちゃった。たれパンダの顔が(笑)。
てぃ先生 そうですよね(笑)。ホントに考えてほしくないのなら、「キリンを想像してください」と言うべきなんです。
菊地 なるほどね!
てぃ先生 それと同じように、廊下を走ってる子どもがいたら、「走らないの」じゃなくて「歩こうね」と言ったほうがいいわけです。お友だちをたたいちゃったなら、まずは「ダメだよ」と止めたあと、「お口で言ったほうがいいよ」とか、「いやなことがあったらママに教えてね」など、たたく代わりの正しい行動を合わせて教えるのが鉄則です。
菊地 すごくわかりやすいです。すぐに娘に試したくなってきました。早く何かダメな状況をつくって!って思う(笑)。
てぃ先生 アイデアがあると、試したくなりますよね(笑)。
菊地 あと、先ほどおっしゃってましたけど、子育ての方針は、家庭によってけっこう違うじゃないですか。以前、知り合いのママが、公園で子どもを遊ばせていたとき、動く遊具のすぐそばに子どもたちがたまっていたので、「そこ危ないよ」と声をかけたそうなんです。そうしたら、その中にいたひとりの子の親御さんに、「うちの子はしかる教育じゃないんで」と言われて、ぎくしゃくしたらしくて。私も今後、子どもがお友だちと遊ぶ年齢になったら、そういう場面でどう対処すればいいかもすごく気になります。
てぃ先生 それは、見知った関係でない限り、自分の子どもを守ることだけ考えればいいと思います。他の子どもの何かを正そうとは考えないほうがいいです。たとえば、自分の子どもが他の子におもちゃを取られたときも、取った子をしかる必要はなくて、「取られていやだったね。もっと使いたかったね」と自分の子のフォローに徹すればいいんです。
菊地 なるほどね!
てぃ先生 それなら、相手を否定せず、その家庭の教育にも介入せず、ただ自分の子をフォローしているだけですから。それをせずにうやむやにすると、お子さんの心には、「ママは自分のことを守ってくれなかった」という印象だけが残ってしまいます。
菊地 そうかぁ。
てぃ先生 なので、お子さんの気持ちに対するフォローだけは忘れずに。子どもは、たとえ悲しい思いをしても、「ちゃんとママが守ってくれた」とか、「おもちゃは取られちゃったけど、自分のこの悲しい気持ちを、ママはわかってくれた」という事実があれば、またがんばれるので。
菊地 確かに、そういうものかもしれない。
てぃ先生 仮に、菊地さんがその子をしかったとしても、その子の根本的な何かが変わるわけじゃないので。しかったことによって次回からどうなるかというと、菊地さんがいる場では、その子はそれをしなくなるだけなんです。