イヤイヤ期に備えて親ができることは?
菊地 なるほど~。すごく勉強になります。うちの娘も、これから本格的なイヤイヤ期を迎えると思いますが、イヤイヤ期に備えて親ができることってありますか?
てぃ先生 基本的に子育てのイライラって、子どもじゃなくて時間に対してなんです。
菊地 ああ、そうかも!
てぃ先生 たとえば、あと5分で家を出なきゃいけないというときに、玄関で「靴、はきたくない」って子どもがごねたら、そりゃあ誰だってイライラします。でも、家を出るべき時刻まであと2時間あれば、誰もイライラしないですよね。
菊地 思い当たりすぎてどうしましょう(笑)。さっき、家を出る直前に、娘がカップに入ったお菓子を全部、私のバッグの中にぶちまけて、溶けてベタベタのまま来ました(笑)。朝も、保育園に預けないといけないのに、朝ごはんを全然食べずに、ブロッコリーを投げたりするんです(笑)。そういうのを見ると、「なんでいまのタイミンで!」と思っちゃいますね。
てぃ先生 そうなるのを避けるためにも、子育ては、最悪の時間の想定で備えておくほうが余裕をもてるんです。特に、これから本格的にイヤイヤ期に入りそうで、朝の支度もいつもよりも15~20分押すだろうなと思ったら、その数カ月間だけは、親子で15分早起きするとか。そういう調整で解決できることって、実は多いです。
菊地 確かに。
”すべきこと”を意識的に手放す作業を
てぃ先生 あとは、いままで当たり前だと思ってしていたことを、手放してみるといいです。たとえば、いままで週7回していた掃除を、週4回にするとか。食事も3食ちゃんと作るのが当たり前だったけど、朝は手軽なものに変えてみるとか。子どもって、コーンフレークや素うどんでも、意外と喜ぶじゃないですか。
菊地 本当にそうなんです。最初のころは離乳食を娘もよく食べてくれてたので、3食ちゃんと作るのが苦じゃなかったんですね。でも、あるときから全然食べなくなって、作ったのに食べてくれないなら、もう作らなくてもいいじゃん、みたいな心境になったことがあって。
てぃ先生 はい。
菊地 それで、どうしたらいいんだろうっていう悩みを自分のユーチューブにあげたら、視聴してくれたママさんたちが、「うちの子は、朝は大人とほぼ同じパンとヨーグルトですよ」とか、「朝なんて適当で、3日連続うどんです」などのコメントを書いてくれて、すごくラクになったんです。結局、「3食ちゃんと作ってあげたい」というのは親だけの思いで、子ども的にはそうじゃなくても全然いいんだなって。それで最近、朝はパンケーキと飲むスムージーに変えたら、めっちゃ食べるんですよ(笑)。
てぃ先生 よかったじゃないですか(笑)。
菊地 だから、親も柔軟に考えて、子どもの成長に合わせてやり方を変えていくことが大事だなって、身をもって感じました。
てぃ先生 そのとおりだと思います。たいへんな時期は特に、自分の中で意識的に負担を減らしていかないと、やるべきことばかりがどんどん増えて、自分の精神状態が、〝捨てられないゴミ屋敷”みたいになっちゃうんです。なので、「これはやらなくてもいいんじゃない?」というものを見つけて、意識的に手放す作業を、理想を言うと1カ月に1回ぐらいやれるといいんじゃないかな。
菊地 私も、子育ても仕事も家事もちゃんとやらなきゃとずっと思ってたんです。でも、それだと自分がもたないので、最近は、1日の終わりに部屋が散らかったままでも、とりあえず子どもが元気で、今日も一日楽しかったからいいや!と思って、子どもといっしょに寝落ちできるようになりました。
てぃ先生 だって、18才が成人で、少なくともあと16年子育ては続くわけで。がんばりすぎても、息切れしちゃいますから。
菊地 そうですよね。それに、自分の子ども時代を振り返っても、子どものフォローを親が全力でやりすぎることが、その子にとって必ずしもいいわけじゃないとも思います。
てぃ先生 確かに。その全力でやったことが、本当に正解だったかどうかもわからないですしね。
菊地 はい。私自身も自立心が旺盛なタイプだったので、親を頼らず失敗もあったけど、そのぶん学びも多かったから、失敗も自分の成長のもとなんだなと思っていて。もちろん、子どもが小さいうちは別ですけど、いつまでも親が全部やりすぎてしまうと、失敗もできない子になってしまうんじゃないかなとも思います。
てぃ先生 僕もそう思います。人生にはいろんな道があってよくて、それぞれの道が、あれは失敗だったな、これはうまくいったなっていうことの積み重ねだと思うんです。それが良い・悪いではなくて、自分が歩いてきたそれぞれの道が、その子オリジナルの人格を形成していくというか。だから、自分の子ども時代に親はこうしてくれたけど、この子にはそれをやらないでおこうということも、あって当たり前だと思うし。むしろ、あまりベストを尽くさないほうがいいんじゃないかなと僕は思いますけどね。
菊地 すごく勉強になります。ところで、てぃ先生は、ご自分の子どもがほしいとは思ったりしないんですか?
てぃ先生 思いますよ(笑)。
菊地 じゃあいつか、てぃ先生がパパになったら、ご自分のお子さんもいっしょに保育できますね。あ、でも、お勤めの保育園にお子さんがいたら、自分の子ばっかり気になって、世話を焼いちゃいそうじゃないですか。
てぃ先生 いや、逆みたいですよ。以前、同僚の方がお子さんを預けたことがありましたけど、ほかの子ばかり優先して、自分の子は後回しになったり、むしろドライに接しちゃうみたいで。あとでめっちゃ謝ってましたけどね(笑)。
菊地 そうかぁ(笑)。保育園といえば、私も、娘が通ってる保育園にすごくお世話になっていて、先生方には本当に感謝して1カ月に1回は、〝すべきこと〟を意識的に手放す作業をするんです。でもその一方で、私、それに甘えてていいのかな?とも思うんです。
てぃ先生 いや、それは本当に(笑)いいと思います。特に、お子さんが小さい時期は、家の中では子どもを愛でるだけ。ほかのことは外に任せるぐらいの気持ちでホントにいいと思います。
菊地 そう言っていただけると、すごくラクになります。今日は、てぃ先生とお話しできて、本当によかったです。イヤイヤ期にも、本人からすると事情があることがよくわかったし。いままでは自分主体で、「イヤイヤ期のママはたいへん、どうしよう」と思いがちだったけど、なんでイヤイヤしてるのかを考えたら、娘がよりいとおしくなりました。この先、子どもが何かをいやがったりしたら、そのひとつひとつに対して、「この子が何を思ってそうしてるのか」を考えて、ちゃんと向き合おうって。
てぃ先生 素晴らしいです。
菊地 すごく勉強になったし、育児をもっと楽しもうと思えました。
てぃ先生 それが何よりだと思います。
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●てぃ先生・Profile●キャリア14年の現役の保育士として、ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常をつぶやいたTwitterが好評を博し、子育てや保育に関する役立つ情報やアイデアを発信したYouTubeチャンネルも登録者数が65万人以上に。著書に『てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』『てぃ先生の子育て図鑑』(ダイヤモンド社)など。2022年4月よりEテレ『ハロー!ちびっこモンスター』にレギュラー出演。『Baby-mo(ベビモ)2022夏秋号』表紙では赤ちゃんモデルと共演。
●菊地亜美・Profile●1990年北海道出身。アイドルグループを卒業後、タレントとしてテレビ・CM・ラジオなど活躍中。2018年結婚。もうすぐ2才「こあみ」ちゃんのママ。YouTubeチャンネル
「あみちゃんねる」では子育てや飾らないライフスタイルを公開。
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撮影/曽根将樹(PEACE MONKEY)スタイリング/豊島優子(菊地亜美さん分) ヘア&メイク/加藤志穂(PEACE MONKEY) 取材・文/浜野雪江