体罰は子供の脳に大ダメージ。心身の発達も阻害します
実際に脳の研究によって、子供のころに虐待されたり体罰を受けて育ったりすると、脳に深刻なダメージを受けることがわかってきました。
学習や記憶、感情のコントロールをつかさどる前頭前野や、声や音を知覚する聴覚野が変形してしまうのです。その結果、子供はキレやすく攻撃的になる、反社会的な行動が増える、といった様子が見られるようになり、それが大人になっても続く傾向があると考えられています。
また、虐待を受けていると、いつたたかれたりどなられたりするかわからないため、子供は常に緊張を強いられた状態で生活することに。親の顔色をうかがい、自分で考えたり伝えたりすることができなくなるので、心の成長が阻害されてしまいます。
このように、体罰は子供の心身に悪影響しかないのです。
虐待の半数以上は、実の母親によるもの
冒頭でも紹介していますが、報道で取り上げられるような児童虐待の事例を見ていると、虐待をしているのはたいてい父親、または母親の交際相手が多いという印象を受けるかもしれません。
しかし、厚生労働省の報告によると、例年、虐待をした人の5~6割が実の母親です。父親が虐待をしているケースは全体の1~3割、母親の交際相手は数%にすぎず、母親が虐待しているケースが圧倒的に多いのが現状です。
また、虐待で死亡する子供の数は、毎年約80人もいます。そのうち、約8割が3才以下の乳幼児です。日本では、乳幼児期に育児をしているのはおもに母親で、育児の大変な時期に虐待が起こりやすいことが読み取れます。
原因は親のストレス。その矛先が子供たちに向いてしまう
たたいたりどなったりしてしまう背景にあるのは、おもに親のストレスです。
仕事の不満、経済的な苦しさ、睡眠不足、などさまざまな理由でたまったストレスのはけ口を子供に向け、感情を爆発させてしまうのです。また、子供の対応に疲れてネグレクト(育児放棄)をする親もいます。
虐待をするのは極端な例、と思うかもしれません。でも、ママも疲れなどからイライラしているときに赤ちゃんが泣きやまない、離乳食を食べない、言うことを聞かない、などが重なると、つい手が出たりどなったりしてしまうこともあるでしょう。これがエスカレートすることもあるのです。