小説『うさぎの耳』|谷村志穂

小説『うさぎの耳』|谷村志穂

子どもの障がい、夫の失踪、ギスギスした義母との暮らし。そんななかで、主人公の美夏は、公園で出会った莉子と心を通わせていく。その莉子にも複雑な事情があり…。喪失を抱えるすべての女性に寄り添う再生の物語。

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    うさぎの耳〈第一話〉緑色のパペット|谷村志穂

    うさぎの耳〈第一話〉緑色のパペット|谷村志穂

    小さな部屋だ。客間も含めて八つある屋敷の中で、一番と言っていいはずの狭い部屋を、私たちはもらっている。 ベビーベッドも入っていた時には、理玖を抱えて身動きするのもやっとだったが、今はその場所に木机と椅子、窓際にはシングル…

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    うさぎの耳〈第二話〉そばかすパペット|谷村志穂

    うさぎの耳〈第二話〉そばかすパペット|谷村志穂

    あまり期待してはいけない、と自分に言い聞かせていた。 彼女は、昼下がりのいつもの公園で、たった一度出会っただけの女性だ。思えば名前も訊いていないのだ。 ベビーカーの中の理玖の顔を見て、リクくん、とかすれた声で呼びかけてく…

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    うさぎの耳〈第三話〉シャボン玉のパペット|谷村志穂

    うさぎの耳〈第三話〉シャボン玉のパペット|谷村志穂

    理玖は生後七ヶ月、母子二人で過ごしていた公園で、はじめて友人になった飯村莉子は、不思議な人だった。 次に会う約束やLINEでのやり取りは一切しないと、最初から言われていたのだが、月曜日と金曜日には公園に来る、という予定を…

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    うさぎの耳〈第四話〉チョコ・クッキー|谷村志穂

    うさぎの耳〈第四話〉チョコ・クッキー|谷村志穂

    夕暮れのはじまった道を、莉子とベビーカーを押しながら、住居まで歩いて戻った。 理玖を乗せたベビーカーの車輪が、時折道端の小石を拾って、ことん、ことんと鳴る。 おー、おーと、夕映えに向かって手を伸ばす理玖。 きゃあ、という…

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    うさぎの耳〈第五話〉スイカの帽子|谷村志穂

    うさぎの耳〈第五話〉スイカの帽子|谷村志穂

    二階の窓は広く、厚地のカーテンを両端に手繰り寄せていくと一気に視界が開ける。朝ごとに、新しい一日の始まりを感じる。 陽射しがあれば、ベッドの上の白いシーツには、光がさまざまな線で形を描く。 ここ最近は、ずっと雨の日が続い…

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    うさぎの耳〈第六話〉にんじんのパペット|谷村志穂

    うさぎの耳〈第六話〉にんじんのパペット|谷村志穂

    隣駅の手芸店で少しずつ買い足しているのは、ハマナカ毛糸のピッコロという毛糸玉だ。 アクリル毛糸でごわっとした感触があり、セーターやマフラーにするには硬すぎるが、パペットにすると、しっくりくる。 糸は店員さんによると、全部…

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    うさぎの耳〈第七話〉大きなコーヒーカップ|谷村志穂

    うさぎの耳〈第七話〉大きなコーヒーカップ|谷村志穂

    ◀『うさぎの耳』を最初から読む 同期が丸テーブルの中央に、視線を寄せている。 スーツに身を包んだOBも、ブラウスやワンピースを着たOGも、学生時代は交代で部馬の世話を続けた仲間たちだ。 馬術競技会の主力選手だったのは、同…

  • 続きを読む: うさぎの耳〈第八話〉花火のパペット|谷村志穂
    うさぎの耳〈第八話〉花火のパペット|谷村志穂

    うさぎの耳〈第八話〉花火のパペット|谷村志穂

    ◀『うさぎの耳』を最初から読む SNSで集まった情報の中の二人ともが、隆也に思えた。白坂たちの報告を受けてからは、想像ばかりが膨らみ、気持ちが昂(たかぶ)り、何をしても上擦っていた。どちらも隆也であってほしくないような気…