
隣駅の手芸店で少しずつ買い足しているのは、ハマナカ毛糸のピッコロという毛糸玉だ。 アクリル毛糸でごわっとした感触があり、セーターやマフラーにするには硬すぎるが、パペットにすると、しっくりくる。 糸は店員…

二階の窓は広く、厚地のカーテンを両端に手繰り寄せていくと一気に視界が開ける。朝ごとに、新しい一日の始まりを感じる。 陽射しがあれば、ベッドの上の白いシーツには、光がさまざまな線で形を描く。 ここ最近は、…

夕暮れのはじまった道を、莉子とベビーカーを押しながら、住居まで歩いて戻った。 理玖を乗せたベビーカーの車輪が、時折道端の小石を拾って、ことん、ことんと鳴る。 おー、おーと、夕映えに向かって手を伸ばす理玖…

理玖は生後七ヶ月、母子二人で過ごしていた公園で、はじめて友人になった飯村莉子は、不思議な人だった。 次に会う約束やLINEでのやり取りは一切しないと、最初から言われていたのだが、月曜日と金曜日には公園に…

あまり期待してはいけない、と自分に言い聞かせていた。 彼女は、昼下がりのいつもの公園で、たった一度出会っただけの女性だ。思えば名前も訊いていないのだ。 ベビーカーの中の理玖の顔を見て、リクくん、とかすれ…

小さな部屋だ。客間も含めて八つある屋敷の中で、一番と言っていいはずの狭い部屋を、私たちはもらっている。 ベビーベッドも入っていた時には、理玖を抱えて身動きするのもやっとだったが、今はその場所に木机と椅子…