赤ちゃんが罹ると重症化しやすい「RSウイルス」。これを防ぐ新たな選択肢として注目されているのが、妊娠中に接種する「母子免疫ワクチン」です。
今回は、産婦人科医の宋美玄先生に、「そもそもRSウイルスとは?」「なぜ妊娠中の接種で赤ちゃんを守れるの?」「安全性や副反応は?」など、気になる疑問を詳しく伺いました。
そもそもRSウイルスってどんな病気?
RSウイルスは、ほぼすべての乳幼児が2歳までに一度は感染するといわれるウイルスです。熱や鼻水などの風邪に似た症状のほか、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸がのしづらさが特徴です。
とくに、生後6カ月未満の赤ちゃんは重症化しやすく、細気管支炎や肺炎で入院が必要になることもあります。なかでも生後1〜2カ月までの新生児期は、入院の確率が高くなるため、注意が必要です。
「呼吸の苦しさで母乳やミルクを飲めなくなったり、酸素が足りなくなって唇が紫色になったりすることも。RSウイルスには特効薬がなく、入院しても酸素吸入や点滴などの対症療法を行いながら、症状が落ち着くのを待つほかありません。苦しそうな我が子を見守るのは、ママ・パパにとってもつらい時間です」
RSにかかった乳児の4人に1人が、入院が必要になるというデータも。入院治療となると、赤ちゃんの体への負担だけでなく、ママ・パパにとっても大きな負担がかかります。きょうだいがいる場合、上の子のお世話との両立も、大きな負担となるでしょう。
また、仕事を休んで付き添わなければならないことも多く、看病による体力的・精神的な疲れに加え、経済的な負担が生じることもあります。

RSウイルスは、治った後にも注意が必要!
さらに、RSウイルスにかかった後は、その後の喘息発症リスクが高まることも知られています。特に、重症化して入院を経験した赤ちゃんでは、その後も気管支が敏感になりやすく、咳や呼吸のトラブルを繰り返すケースが報告されています。
「喘息を発症すると、運動のときに注意が必要になったり、使えない薬があったりと、日常生活にも制限が出てしまうことがあります」
RSウイルス感染症は、感染時のつらさだけでなく、長期的な影響が残る可能性がある点が厄介な感染症といえるでしょう。
「RSウイルスというと、以前は冬の感染症のイメージがありましたが、最近では夏にも流行することも。ほとんどの子がかかる一般的な病気ですが、入院や後遺症のリスクもあることを考えると、決して軽視できない感染症です」
なぜ妊娠中に接種するの?

とくに重症化のリスクが高い生後6カ月未満の赤ちゃんを守るために、注目されているのが妊娠中のワクチン接種です。
「妊娠中にワクチンを接種すると、ママの体でRSウイルスに対する抗体がつくられます。その抗体が胎盤を通して赤ちゃんにも届くのです。この仕組みを、母子免疫と呼びます。これによって、生まれてすぐからRSウイルス感染を予防できるのです」
ワクチン接種が可能なのは、妊娠24〜36週の間。
宋先生は「28~36週が効果が高く、人によって早産になる可能性も考慮すると、個人的には30~32週がおすすめです」と話します。
「RSウイルスは、早産で生まれた子にとっては大きな脅威です。体が小さく抵抗力も弱いため、感染した場合に重症化しやすいのです。早産は、産婦人科医でも事前に予測できないことがあります。抗体の持続期間を考えて、『出産直前に打ったほうが効果的なのでは?』と考える方もいるでしょう。ですが、私は接種可能なギリギリの時期まで待つよりも、ある程度余裕を持って抗体を赤ちゃんに届けておくことが大切だと考えています」
妊娠中に届けた抗体は、生後6カ月ごろまでその効果が持続します。
「いちばん重症化や入院のリスクが高い時期は、母子抗体で赤ちゃんを守る。その後は、そのほかの感染症対策と同様に、家族の手洗いや咳エチケットなど、日常生活のなかでの予防で感染を予防していく。こうした二段構えで、RSウイルスが重症化しやすい時期を乗り切っていけるといいですね」

安全性や副反応は?
妊娠中に接種できるRSウイルスのワクチンが登場したのは、2024年5月。まだ新しいワクチンのため、不安に思う人も多いでしょう。
「RSウイルスのワクチンは、ほとんど副反応が出ないケースが多いですね。あっても軽い発熱や、注射をしたところの痛み程度で、通常は数日以内におさまります。国内外の臨床試験で十分に安全性は確認されているので、安心して接種できます」
日本だけでなく、海外ではすでに複数の国で導入され、広く接種されています。
「治験に協力してくれたママと赤ちゃんのおかげで、私たちは安心してこのワクチンを打つことができるようになりました。これまでは、家族みんなが触れるものはこまめに清掃したり、せきや鼻水などの症状があるときはなるべく赤ちゃんに接触しないようにしたりと、生活の中でできる予防しかありませんでした。妊娠中に接種できるようになったことで、より安心して赤ちゃんとの生活を送れるのは大きなメリットだと思います」
接種するにはどうすればいいの?
RSウイルスのワクチンは、かかりつけの産院で相談・予約するのが基本です。まだ新しいワクチンのため、取り扱いの有無は医療機関によって異なります。まずはかかりつけの病院に問い合わせてみましょう。
「接種費用は保険適用外のため、自費となります。自治体によっては助成制度を設けているところもあります。お住まいの地域の最新情報を確認してみてください」
また、インフルエンザや新型コロナワクチンとの同時接種も可能です。接種時期や体調に不安がある場合は、かかりつけの医師と相談しながらスケジュールを決めていきましょう。
「RSウイルスの抗体は、妊娠中にできる赤ちゃんとママ自身へのプレゼント。誰もがかかる可能性がある病気なので、正しい情報を知って、選択していってほしいなと思います」
※ワクチン接種の詳細は、かかりつけ医にご相談ください。
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RSウイルスのワクチン接種について、もっと知りたい方は ▶この動画 もぜひ参考にしてください。
取材/浦上藍子




