妊娠生活, 妊娠・出産

妊娠中の腸内環境が「赤ちゃんの免疫の出発点」になる理由。〈ベビーのアレルギーリスクと腸活〉の意外な関係とは?

妊娠中の腸内環境が「赤ちゃんの免疫の出発点」になる理由。〈ベビーのアレルギーリスクと腸活〉の意外な関係とは?

つわりで食べられない、飲めない。なのに便秘はひどくなる。おなかも足もむくんで、とにかく出ない感じが続く…。妊娠中によく聞かれる悩みです。

じつは、妊娠中の腸内環境は、ママの快調だけでなく、赤ちゃんが生まれて最初にもらう菌や免疫の土台づくりにも関わることが、近年わかってきています。

今回は、産婦人科医の善方裕美先生に、「なぜ妊娠すると腸トラブルが起きやすいのか」「ママと赤ちゃん、どちらにもメリットのある腸活とは?」についてじっくり伺いました。

話を伺った善方裕美先生(よしかた産婦人科 院長・横浜市立大学産婦人科 客員准教授・医学博士)

「妊娠してから急に便秘に…」それ、ほとんどの妊婦さんが経験しています

石橋(以下石):妊婦さんから「妊娠してから便秘がひどくなった」という声、本当に多いです。これはやっぱり妊娠と関係しているんでしょうか?

善方先生(以下善):はい、とても深く関係しています。実際、「妊娠中に便秘を経験する方は3人に2人」というデータ(2016年『妊婦の便秘に関する実態調査と対策』)があるんです。妊娠中は、多くの人が同じような変化を経験します。

石:3人に2人はけっこう多いですよね。

善:妊娠すると、腸がスムーズに動きにくくなる医学的な理由がそろってしまうので、仕方ない面もあるのですよね。

妊娠中に便秘が増える主な理由とは

善:まずひとつ目の理由は、「黄体ホルモン」で腸の動きがゆっくりになることです。

妊娠初期〜中期は「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が急増します。これは赤ちゃんを守るためにとても大切なホルモンですが、腸の動きをゆっくりにしてしまう作用も持っているんです。

石:子宮を守るホルモンが、腸にはブレーキになるんですね。

善:そのとおりです。これだけでも、便が滞りやすくなります。さらに、つわりで「食べられない・飲めない」ことも要因になります。

つわりで食事量が減ったり、水分がとれなかったりすると、便の「かさ」も「水分」も足りなくなり、どうしても固くなり、出にくくなります。

さらに、妊娠初期は気持ちの揺らぎが起こりやすい時期ですよね。自律神経と腸は密接につながっているため、気持ちが不安定になると、腸の動きも影響を受けてしまいます。

石:なんと…。この時点で、すでに3つの要因が…!

善:まだありますよ。とくに妊娠後期は、赤ちゃんと子宮が大きくなることで腸が圧迫され、通り道が狭くなって便が出にくくなるんです。

妊娠中の便秘は、妊婦さんの努力不足ではなく、生理的にそうなるということなんです。

石:妊娠中は条件が重なり、便秘になりやすいということがよくわかりました。まずはママ自身のためにも腸内環境を整えてほしいですが、実は妊娠中の腸活って、赤ちゃんにも大きな影響があると聞きます。

腸内環境が整うと、実は赤ちゃんにもいいことがある

善:はい。最近の研究で特に注目されているのが、「ママの腸内環境」と「赤ちゃんが生まれて最初にもらう菌」が、密接につながっているという点です。

実は、肛門と膣の間、およそ4cmの距離を菌が行き来するので、腸内フローラと膣内フローラは非常にリンクしているんです。ですから腸内環境が整っていると、膣内フローラも良い状態になりやすい。

そして赤ちゃんは、生まれてくるときに産道を通りながら、膣内の菌やママの皮膚の菌をそのまま受け取ります。これが赤ちゃんの腸内細菌の「最初のスタートセット」になるんです。

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石:ママの腸 → 膣 → 赤ちゃんへ。いい菌のバトンがつながっていくイメージですね。

善:まさにその通りです。赤ちゃんの腸は未熟でほぼ無菌状態なので、この「もらう菌の質」が、その後の腸内環境や免疫の立ち上がりに影響していくと言われています。

さらに、良い腸内フローラを持つママから生まれた赤ちゃんは、特に免疫面のメリットが大きいとされ、この点は近年とても注目されています。

妊娠中からの腸活は、赤ちゃんのアレルギー予防にも期待がもてる

石:腸と免疫の話も気になります。

善:腸には、体の免疫細胞の約7割が存在していると言われています。そのため、腸内環境を良くすることは、免疫のベースづくりに直結します。

実際、妊娠中に

プロバイオティクス(善玉菌そのもの)
プレバイオティクス(善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖)

を取り入れることで、赤ちゃんのアレルギー発症リスクが低減する可能性を示す研究データもあります。

特に赤ちゃんのアトピーや食物アレルギーに関しては、国際的にも質の高いエビデンス(2021年『Probiotics for preventing the onset of allergic diseases〈アレルギー疾患の発症予防のためのプロバイオティクス〉』など)が集まってきています。妊娠中の腸活は、「自分のため」と「赤ちゃんのため」がしっかり重なるということなんです。

今日からできる「妊婦さんの腸活」

石:とはいえ、出にくい条件が重なる妊娠中の腸活は大変ですよね…。妊娠中でも無理なく続けられる腸活を教えてください。

① 食事:善玉菌を「入れる・育てる」

善:まずは、善玉菌を「入れる」食品を意識しましょう。発酵食品はとてもよいです。

ヨーグルト
納豆
味噌・漬物などの発酵食品 など

さらに善玉菌を「育てる」食品(善玉菌のエサになるもの)、具体的には水溶性食物繊維やオリゴ糖もおすすめですね。

バナナ
里芋
ごぼう
きのこ
大豆・豆類
玄米・雑穀 など

石:「まごわやさしいこ」的な食材ですね(「まごわやさしいこ」食材は下を参照)。

善:食材は人によって合う・合わないがありますので、腸と相性がいい「自分の定番食材」を見つけるのは、とてもいいですね!

② 水分は「ちょこちょこ飲み」を意識

善:水分も大事です。一度にたくさん飲む必要はなく

マイボトルを持つ
スープや味噌汁で、食べる水分をとる など

など、こまめな水分補給を意識しましょう。

③ 温める(温活)

善:腸は冷えにも敏感ですから、

湯船につかる
足首や腰、おなかを冷やさない
根菜のスープなどで内側から温める など

など、日々できる範囲で温活もしてほしいですね。

④ ゆるい運動・ストレッチ

善:マタニティヨガ、ウォーキングなどの有酸素運動や、寝る前のストレッチなどは腸にもプラスになります。

⑤ 朝ごはんは腸の“起動スイッチ”

善:朝食は、腸に「そろそろ動きましょう」という合図になるので、朝食も食べる習慣を。

妊娠中の腸活は、赤ちゃんへの最初のプレゼント

善:妊娠中の便秘や不調は、ママの努力不足ではなく、妊娠にともなって、からだが変化している証拠です。まずは、自分を責めないでくださいね。

そのうえで、今日お話ししたような腸活を少しずつ取り入れると、ママ自身がラクになるだけでなく、赤ちゃんに良い菌のバトンをつなぐことができます。

赤ちゃんは生まれた瞬間、ママからもらった菌を基盤に腸内環境を育て、免疫の土台をつくり始めます。

だからこそ、妊娠中の腸活は「ママの心地よさ」と「赤ちゃんの未来の健やかさ」の両方を支える、大切な一歩になるのです。

自分のために始めた腸活が、実は「赤ちゃんへのギフト」にもなる。そう思うと、少し続けやすく感じられますよね。どうか無理のないペースで、自身をいたわりながら続けてみてくださいね。




撮影/榊 水麗 取材・文/石橋紘子

【監修】 善方 裕美 よしかた産婦人科 院長

産婦人科専門医。医学博士。横浜市立大学産婦人科 客員准教授。1993年高知医科大学卒業。2020年より現職。よしかた産婦人科は関東圏で初めてWHOガイドラインの「国際出産イニシアティブ」の認証を受けた分娩施設。ママと赤ちゃん、ご家族にとって優しいお産を守り、理学療法を取り入れた先進的な産前産後ケアを充実させている。

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