家を出る前には母の写真に「行ってきます」と挨拶をし、近所の神社で参拝をしてクリニックへ。早々に血液検査のための採血をして、そこから1時間後に診察となりました。緊張しながら先生の前に座る我らふたり。開口一番先生の口から放たれたのは
「おめでとうございます」
はい? と聞き返しそうになりましたが、聞こえたのはおめでとうございますという言葉でした。なんと、私は妊娠していました。先生から渡された紙には、hcg428、4週3日、予定日2022年2月11日と書かれていました。

hcg428…!この日にたどり着くまでに、妊娠検査薬によるフライング検査はしないと決めていましたが、そのかわりに検索魔と化していたため、この数値が合格であることはすぐにわかりました
ちらりと夫の顔を見ると、夫も何が起こっているのかよくわかっていない様子。それでも私たちに奇跡が起こっているんだ、とぼんやり思いながら先生の話を聞きました。
先生から「次は来週の胎嚢確認ですね」と言われ、喜んだ体にピシッと水をかけられたように気が引き締まる思いでしたが、とにかく…とにかくお腹にいる。移植日以降いるかいないか不明ながら毎日お腹に向かって話しかけてきたけれど、あんなふうにやってきたことは間違っていなかったのかもしれない。だって、今ここにいるって先生言っているし。
気がかりだった茶おり、ピンクおりに関しては、おそらく妊娠初期によく見られるもので収まっていくでしょうとのこと。しかし隣に座る夫は「やってはいけないことはありますか?」と質問するなど、至って冷静でした。
診察室で妊娠中に気をつけることや栄養に関する冊子をもらい、会計を済ませ外に出ました。妊娠していることが夢のようで、信じられなくて、地面から体が3cmぐらい浮いているような感覚。そのまま夫とランチをしようと近くの店へ入りました。
すると夫が「すごいな、妊娠してるんやな」とひとこと。私も自分の身に起こっていることがよくわかっていないけれど、お腹にいるのならば栄養をとらねば!という使命感がむくむくと湧いてきました。
いつもよりパワー強めなランチを食べながら、気になっていたのは夫の反応でした。マンガやドラマでよく見る「やったー!」みたいなリアクションが全くなかったこと。「直前に妊娠継続がどれだけ大変かとか、ビビらせ過ぎてごめん」と謝ると、ほんまやで!と笑っていました。夫はとても天真爛漫な人。不妊治療専門クリニックではいい結果でも喜びを爆発させちゃダメだよ、私の年齢のこともあり流産の可能性だってあるよと、診察直前にも話してしまい、夫の喜ぶポイントを奪ってしまった形になったのはとても悪かったなと今でも思っています。

なんだかいろいろ信じられなくて、自宅近くの公園でひたすらいろんな感情を噛み締めながらこの日の空を撮影していました
とにかく第一関門を突破できたことを今日だけは喜ぼう。そして明日からはストレスをためないように、また自分が心地いいことだけ選んでやっていこう。
とにかくお腹の住人のことを最優先に考える。私にできることはそれだけ。そんなふうに決意を新たにした日でもありました。
※この連載は個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。




