女性のライフコースは、結婚して母親になるだけが幸せな人生ではありません。
しかし、昭和の家族像が更新されないまま少子化が加速したことで、子どものいない女性は、持たなくてもいい罪悪感を背負わされています。その影響は、「未産うつ」「未産クライシス」として現れている実態があることがわかりました。
子どものいない女性を応援する「マダネ プロジェクト」を主宰する、くどうみやこさんの著書『誰も教えてくれなかった子どものいない女性の生き方』より抜粋して紹介します。子どものいない女性にある「心のくぼみ」を見つめていきます。
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「未産うつ」と「未産クライシス」の実態
子どもを持てなかったことで気持ちが沈み、後ろ向きの感情や悲観的な考えが長く続くことを「未産うつ」と名づけました。
出産後に気分が落ち込み、イライラや不安、不眠などの症状が続く「産後うつ」がありますが、子どもを持てなかった女性にも同じように「未産うつ」があることに気づきました。
子どもを見るだけでもつらい、泣いてばかりいる、友人とも会う気がしない、家に引きこもってしまうなど、症状は軽度から重度までありますが、「未産うつ」は子どもを望んでいた人なら誰もが陥る可能性があるものです。
Q.不妊治療中、または子どもを授かれないことで、ご自身の経験に近いものを教えてください

子どもが欲しかったかたに「不妊治療中、または子どもを授かれないことで、ご自身の経験に近いもの」(上図参照)を聞いたところ、「気持ちが沈み落ち込んだ」が78 %、「つらくて涙することが多かった」が60%と割合は高く、子どもができないことに沈んだり、泣いたりすることは特別なことではありません。
さらに落ち込み度が少し進んだ状態の「誰とも話したくない、会いたくない気分になった」は43%。「あまり外出する気になれなかった」は23%で、約4分の1の人は家にこもりがちになることがわかりました。体調面への影響では「頭痛や倦怠感など体調不良が続いた」が17%でした。
「ずっと子どもが欲しかった。外でベビーカーを見ただけでも胸が苦しくなり、逃げるように道を変えたりしていました。離婚してしまい、子どもを産めなかったことが一番悲しい。女性として生まれたのに、人生を生ききっていない気がします。親や世間に申し訳ない。このように思っていることは、周りに気づかれないよう隠して過ごしています」
(43歳・独身・会社員)
「妊婦さんや赤ちゃん連れの家族を目にすると気持ちが不安定になっていました。自覚していたよりもストレスがたまっていてパニック障害になり、日常生活が送れないほどに。子どもを産むことが義務感になり、心身共に疲弊してしまいました」
(43歳・既婚・専業主婦)
反対に、「あまり気にしないようにしていた」31%、「産めないことが確定して吹っ切れた」12%、「そんなに深刻に思っていなかった」5%と、さほど悩まないかたもいますが、割合としては少数派。それだけ女性にとって子どものことは大きな問題といえます。
今までそうした感情が定義されてこなかったことや、心の中に閉じ込めてしまうため、一人で思い悩んでしまう人が多いのが実情。ご自身で気づいて、専門のカウンセリングを受けに行かれる人はよいのですが、その手前で立ち止まってしまう方が大半です。
子どものことで夫婦関係が悪くなる「未産クライシス」
自分の気持ちが落ち込んでしまう「未産うつ」とは意味合いが異なるのが、「未産クライシス」です。子どものことがきっかけで夫婦の関係が悪化してしまうことをさす言葉として、こちらも名づけました。
子どもに対する考え方の違いや温度差があり、あきらめたあとに不和になる夫婦関係の状態のこと。出産後の夫婦関係が悪化してしまう「産後クライシス」は一般的に浸透していますが、その未産版が「未産クライシス」です。
「不妊治療を頑張って続けてきたが、夫はあまり協力的ではなかった。治療の影響で体調をくずしても思いやりは感じられず、あきらめた時期から夫婦関係が悪くなり、別居が続いています」(44歳・既婚・会社員)
「授からずにあきらめることに決めたが、夫は内心ほっとしているように感じる。私はまだ後悔は残っているし、つらい気持ちは消えていない。表面上は仲良し夫婦になっているけれど、私の中では夫婦の関係は希薄になったと思っている。この先どうなるのかわからない」(41歳・既婚・派遣社員)
「子どものことについて、夫婦の関係性の変化」を聞いた設問(上図参照)では、半数近い48%の人が「子どものことで関係性に変化はない」と答えています。
また、夫婦で子どもの問題に向き合うことで絆が深まることもあり、「授からなかったが、お互いを思いやって夫婦の絆が深まった」が19%と、約7割近くは夫婦関係に問題なしという結果が。
対して、「気持ちに温度差があり、夫婦関係がぎくしゃくした」15%、「子どものことが原因で離婚を考えたことがある」13%、「子どものことが原因で実際に離婚した」が5%と、約3割には未産クライシスの傾向が。
「未産うつ」のように一人の問題ではないためケースバイケースですが、子どもの問題で約3割が夫婦の関係性に影響を及ぼすという事実は無視できません。
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子どもをあきらめる方法は誰も教えてくれなかった
「未産うつ」や「未産クライシス」の背景には、子どもがいたほうが幸せ、子どもがいてこそ家族といった風潮が要因の一つとしてあげられます。
子どもが欲しいとの思いは、本能的なものと世間体にしばられている部分も少なからず影響していると思います。
まず知っていただきたいのは、つらい気持ちでいるのは自分だけではない、ほかにもたくさんいるということ。そして問題なのは、子どもがいないことで人知れず苦しんでいる人たちの気持ちを、世間があまり理解していないこと、関心がないことです。
一般的なうつ病の人に「頑張って」「気の持ちようだよ」といった励ましの言葉は禁句といわれていますが、「未産うつ」が重い渦中の人に「子どもがいないことを気にしすぎ」「自分しだいだよ」と励ましても、気持ちは晴れるどころか、さらに落ち込んでしまいかねません。
悪意なき善意の言葉に、人は一番傷つくものです。
*妊活メディア『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』の記事を再編集しています。
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