
馬たちを見ていると、様々な記憶が蘇ってきた。
はじめて馬の体に触れた時の、あのどこか不安な気持ち。皮膚が柔らかすぎて、今にもこの美しい生き物を壊してしまいそうに感じたこと。
理玖を抱き上げた時にも、同じように不安だった。馬への不安は幾らでも聞いてくれたし、もっともらしい助言までくれたのに、なぜ理玖のことになると、隆也は急に押し黙ってしまったのだろう。自分こそが、怖いのだという風に。怖くて、怖くて、仕方がないのだという風に、次第に理玖にも触れず、何も言葉を口にしなくなったのだ。
ファームに一台のトラックが砂埃をあげて入ってきて、鹿毛の馬が急に駆け出した。
▶次の話 うさぎの耳〈第十話〉とうきびのパペット|谷村志穂
撮影/中村彰男 校正/岡村美知子




