じゃがポックルという菓子を手提げいっぱい買い、帰路についた。
飛行機の羽田への整備が遅れ、莉子とゆっくり話す時間はなくて、ひどいがそれが今はまだ、救いにも思えた。
玄関先で、両手をこちらに広げて、理玖はぐずりながら、体を預けてくる。
「なんだよ、さっきまでいい子にしてたのに。ママが来たら、もう泣きべそかよぉ」
莉子が、愛情を込めてからかう。
「里歩ちゃんの面会時間、間に合う? ごめんなさい、ぎりぎりになっちゃったね」
「もう、行く。本当はあなたの話をゆっくり聞きたかったけど」
「迷惑ばかりかけて、ごめんなさい」
謝られたって、莉子は困るはずだった。遅れたことを謝っているというよりも、話そうという気にはなれないでいる自分を詫びている。
「そうだ、これ、なんか帰りに、買っちゃってた」
と、じゃがポックルをひと箱手渡す。
「普通の旅行みたいで、いいね。でもあのお義母さんには、ちょっとどうかな」
「確かに、嫌味を言うだろうな」
莉子に聞いてほしいことがあるとするなら、隆也が、辛辣に母親を批判した時に、なぜか自分の方が嫌な気持ちになったという、不思議な感覚についてだった。じゃがポックルへの嫌味は、想像したところでお笑い草としても。
「じゃあね。ここで理玖くんにおっぱいあげてから帰ったらいいよ。君、お待ちかねだもんね」
と、理玖の丸いおでこを撫でる。
「で、これが鍵」
と、キーホルダーのついた鍵をぶらぶらさせる。キーホルダーも、素敵なパペット、頭にかぶったカウボーイ・ハットの中に、鈴が入っていて、それが鳴る。
「新聞受けに入れておいて。私、もう一つスペアがあるから」
莉子は、玄関先にすでに二つのバッグを用意してあった、理玖用のリュックはそのままに、自分用のボンダイ染めのショルダーバッグを肩からかける。いつもそこには、毛糸や編み針やミルクティーのポットが入っているはずだ。今日は、ジップアップのジャンパーにくるぶしまでのスカート、短いブーツに足を入れながら、
「話したくなったら、いつでも言って。待ってるから。ねー、いい子だったね」
と、言って、理玖の顎を両手でもちもちっと掴んだ。
待ってる、そう言ってくれた莉子の何気ないひと言が、今は胸に染みた。待ってる、は、ただ控えているよ、という意味ではなく、少なくとも、互いの関係には先があるよ、という約束だ。きっと? 必ず? 待ってる、つもりだよ、と。
「行ってらっしゃい。私にもまた里歩ちゃんの話、聞かせてね」
頭を下げて、出かける莉子を見送る。
それは、待ってる。必ず。
ただこれからも、私は、夫を待つのだろうか。
生きていて、元気そうな夫、ずっと待っていた夫、果たして私はこれからも待っている、と、彼に口にしたろうか。
きっと? 必ず?
どっち?
隆也からの手紙が届いた、と義母から連絡がきたのは、約半年後のことだった。
連絡が来た、そう、理玖と私はあの家を出て二人で暮らし始めていた。





